「顔面蒼白で、絶望の淵にいました」女王・安井友梨に襲い掛かった試練【特別手記#1】
2023年は私にとって、全国から7箇所ゲストとして呼んでいただけた最多記録でした。女性で全国7箇所呼ばれた人はこれまでいないとも仰っていただけたことが、本当にうれしかったです。私には、勿体ない身に余る光栄な機会でした。 最後の熊本ゲストでは、私の競技人生最後のゲストポーズになるのではないかと覚悟して挑んでいました。全国の皆さんに直接お会いして、9年間の御礼を直接お伝えすること、チャンピオンとしての任務を全うすることが今年の目標でした。 今年のゲストで皆さまに一番お伝えしたかったことは、チャンピオンとしての責任と競技をどのように普及していくかについての私の思いでした。全国のゲストポーズで、その思いを会場にいる皆さまに次のようにお話させていただきました。 「私が目指すチャンピオンは、ただ強いだけのチャンピオンではありません」 私が連覇することで、日本のビキニフィットネスの発展を止めてはいけないとの思いがいつもありました。 「ボディビルと聞いて、誰でもどんな競技かわかるように、ビキニフィットネスと聞いて、誰でもわかる競技にしたい」 この強い思いを実現するためには、チャンピオンとして、どうあるべきか、そして、何をすべきかをいつも自問自答してきました。 しかしながら、私自身は、まだまだチャンピオンとしてやるべきことができていると皆さまに胸を張って言える状態には程遠く、大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。それでもなお、皆さまから受けたこれまでのご恩を、どうしたら少しでもお返しできるかをいつも考えていました。その答えが、ついにわかりました。 「安井が"いて良かったという"よりも、安井が”いなければ困る”と言っていただけるようなチャンピオンになることだ」と。誰も”強いだけのチャンピオン”は求めていない。一人でも多くの方に私のことだけでなく、”ビキニフィットネスという競技を応援してもらえるようなチャンピオン”にならなければいけない。そんなお話を、全国の皆さんに直接お伝えしました。 私の競技人生においてのチャンピオン道は、ボディビル世界チャンピオンの鈴木雅選手がお手本です。鈴木選手を見て、いつか誰からも愛され尊敬されるチャンピオンになりたいと思ってきました。鈴木雅選手から教えていただいたのが、「ゲストは絶対に断ってはいけない。チャンピオンとしての責任だ」ということ。私は9年間ゲストを大会が重なる以外で、ただの一度も断ったことがありません。どんなにハードスケジュールでも、大会1週間前でも受けさせていただく。チャンピオンは自分を優先せず、競技の顔にならなければいけない。競技を普及する役目がある。それならば、私がやるべきことは2つ。ビキニフィットネスチャンピオンとして、メディアやブログ、各地でのゲストポーズ、講習会、セミナー等、可能な限りあらゆる場所で、ビキニのすばらしさをできるだけ一人でも多くの皆さまにお伝えし、ビキニフィットネスを応援していただけるように、競技普及に努めること。そして、日本代表として、ただひたすらに”世界一”を目指すことだと。 これまで、世界一を目指し7回チャレンジさせていただいてきました。今から8年前にはじめて世界選手権のステージに立たせてもらってから、数えきれないほどの予選落ちを繰り返し涙を流してきました。それでも、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)は、私を日本代表選手として、世界のステージに派遣し続けて下さいました。だから、私は結果で何としても恩返ししたいと焦りばかりが募っていきました。