アマゾン「大半が週5日出社を支持」発言が波紋、従業員500人超がCEOに撤回要求
アマゾンの500人を超える従業員はこのほど、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のマット・ガーマン最高経営責任者(CEO)に対し、「週5日出社」義務化に関する先の発言と方針の再考を求める書簡を送った。 米経済ニュースサイトのビジネスインサイダーが入手した書簡は「AWSとアマゾンの従業員が顧客のために日々たゆまぬ努力と革新に取り組んでいる中、10月17日のAWSの全社会議で、週5日出社の方針に関するデータに基づかない説明を聞いて愕然とした」という文言で始まる。 さらに「週5日出社を厳格に求め、このような方法で会社のミッションに貢献できない、あるいは貢献しようとしない従業員に『(働く)会社は他にもある』と言うことで批判的な意見を封じ、そうすることで私たちの文化や未来を損なっている」と書かれている。 ガーマンは先月、自身が話をした従業員の大半は週5日出社を支持していると全社会議で述べた。また、出社したくない人には転職を勧めるようなことも示唆している。 ガーマンは、現在の週3日出社はうまくいっていないと主張。「大した成果は上がらなかった。従業員の出社日が重ならないことが多いため、互いに協力し、学び合うことができなかった」と指摘している。 書簡には523人の従業員が署名しており(うち172人は氏名も明記)、ガーマンの発言は「多くの従業員の考えに矛盾している 」と書かれている。 アマゾンは10月31日に第3四半期決算を発表し、それによるとクラウド部門の堅調な成長に牽引されて売上高は前年同期比11%増となった。AWSの売上高は同19%増の275億ドル(約4兆1840億円)に達し、前年同期の12%増から成長は加速した。
アマゾンの多くの従業員が「怒りに駆られた求人応募」をして転職先を探しているという
アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは9月に、来年1月2日から週5日出社に戻す方針を発表した。 「過去5年間を振り返り、オフィスで一緒に過ごすことの利点は大きいと確信している」と通達に書いた。出社のメリットについて、「チームメイトが社の文化を学び、模範となり、実践し、強化することがより容易になること、共同作業やアイデアの出し合い、発案がよりシンプルかつ効果的に行えること、互いに教え学び合うことがこれまでよりもシームレスになること、そしてチームメンバーのつながりがより深まる傾向にあること」と説明した。 ジャシーは、過去1年3カ月にわたる週3日出社の経験から、対面で業務を行う方が利点が大きいと確信を深めるに至ったと述べた。 週5日出社の方針に従業員はすぐさま反発した。米ビジネス誌のフォーチュンは、アマゾンの多くの従業員が「怒りに駆られた求人応募」をして転職先を探しているようだと報じた。 書簡に署名した従業員らは、週5日出社は一部の従業員により大きな影響を与えると主張している。ここには育児中の人、特に幼い子どもを持つ人や、家族を介護をする人が含まれる。加えて、多様な神経学的特性を持つ従業員や、心身の障害を抱える従業員が困難に直面すると指摘している。就労ビザで働く従業員は特に立場が弱く、週5日出社の方針に従うか、仕事を辞めれば現在の住まいから追われるリスクがある。 アマゾンの広報担当者のマーガレット・キャラハンは「一部の従業員にとっては移行期となる可能性があることを理解している。だからこそ、コロナ禍以前のような出社を義務化するまでまだかなり時間がある段階でこの指針を共有している。また、高齢者介護サービスやペットシッターへのアクセス、信頼できる介護者を見つけることができるオンライン紹介サービスの無料利用など、勤務地に応じて多くのリソースを従業員に提供している」と電子メールで説明した。 キャラハンによると、同社は出勤の手段に柔軟性を持たせられるよう、さまざまな通勤手当や通勤サービスを提供している。これらの措置は地域によって異なり、都市圏では公共交通機関にかかる費用の負担や補助、無料の通勤シャトル、ライドシェアや相乗り、自転車通勤のための毎月の手当などがある。また、自転車通勤の従業員は敷地内の駐輪場所やシャワー施設を利用できるほか、施設の駐車料金も補助される。
Jack Kelly