なぜUSJにキティちゃんがいるの?
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の新エリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」のオープン発表の場に出席したハリウッド女優、イヴァナ・リンチが感嘆の声を挙げた。「ハローキティはフロリダのユニバーサル・スタジオにはいないわ。USJにはフロリダにない要素がある。人間がピンクの家に住むネコに仕えるというのは、理想の世界ね」。ハリウッドスターが日本独特のコンテンツに強い関心を示した。
そう、USJにはハローキティがいる。スヌーピーがいる。セサミストリートのエルモがいる。今ではすっかりUSJの“顔”の一つになっている彼らだが、改めて疑問が湧く。USJって、「映画のテーマパーク」じゃなかったっけ?と。 その疑問に答えてくれたのは、株式会社ユー・エス・ジェイのCMO、執行役員、マーケティング本部長の森岡毅氏だ。昨年こそ、開園以来2度目の年間入場者数1000万人を突破したUSJだが、森岡氏の入社した2010年は700万人台と低迷していた。「数字は嘘をつかない」が信条の森岡氏にとって、その“問題点”は明らか。「ターゲット設定の不必要な狭さ」だった。 当時のUSJの入場者分布は、子供を連れていない独身女性が6~7割を占め、子供連れファミリーは3割にも満たなかったという。人口の年齢構成比と逆のこの現象に目を付けた森岡氏は「ファミリーを集めれば2割増える」と読んだ。関西圏で毎年誕生する新3歳児の数と、それを含む家族のグループサイズ。そして“USJデビュー年齢”を下げることによる生涯の来場回数の増加。これらの数字を弾きだし、直近の集客から長期的展望までを見込んで、3歳から6歳までの子供のいるファミリー層をターゲットにした「ユニバーサル・ワンダーランド」の建設を決めた。その中心的役割を果たしているのが、ハローキティやスヌーピー、エルモだった。 当初、内外からの風当たりは厳しかった。開業当時からの従業員たちは「大人向け」「映画がテーマ」というこだわりやプライド、ディズニーと差別化しなければならないという誤った錯覚。そういった“感情”の部分に加え、「ブレている」、「なんでも屋」という外野からの声。しかしマーケティングのプロとしての絶対的な自信があった。「ターゲット層の拡大」こそが、生き残る道だと訴えた。実は、ハローキティ、スヌーピー、エルモは開園当初からひっそりと存在していたが、それを前面に押し出していくことにした。どれも“世界最高ブランド”だから、だ。