女子野球から転身!競輪一族“4代目”高木萌那が抱く大目標「グランドスラムを達成したい」/未来の競輪スター候補
「できて当たり前」のギャップは苦しかった
ーーわずか3か月の自転車経験で入所し、たくさんの成長があったのではないでしょうか。 萌那 もう言い始めたらキリがないです(笑)。未経験入所なので、たくさんのことを学びました。最初はブレーキがない自転車なんて乗ったことがなくて、クリップバンドも締められないような状態からのスタートでした。そんな状態でしたから、走行スキルはもちろん向上しました。でも精神面でも成長できたと感じているので、成長したのは「全部です」って感じです(笑)。 ーーメンタルの部分での成長はどのような時に感じましたか? 萌那 記録会本番で感じることがありました。第1回、第2回、第3回と成績も一発ずつ伸びていたので、そういうときに気持ちが強くなっているような気がしました。 ーー高木候補生は学生時代に野球で全国優勝しています。それほどチーム戦に精通していて「チーム競技と個人競技」といった競技性の違いに戸惑うことはありませんでしたか? 萌那 戸惑うことはありませんでした。野球は個の集まりで、お互いに仲間の足りない部分を補い合える良さがあります。ですが、裏を返すと足を引っ張ってしまうこともあります。その両面を知っているので、ガールズケイリンの(個人で)思うように思い切りできるという点には逆に良い面を感じました。 ーー自転車未経験ながらゴールデンキャップを獲得するなどポテンシャルを見せつけました。ご自身では『自転車は合っている』と感じましたか? 萌那 結構いい感じで対応できているな、とは思いました。あと、自分は負けず嫌いなのですが、そういう気質はレースで競うことに向いていると思います。 ーー養成所生活の中で印象に残った言葉はありますか? 萌那 競走訓練のときに主担当の教官から「お前何やっているんだ!」と一喝されたことがあるんですが、それが本当に自分のためになりました。周りから「先行してみてはどうか」とアドバイスをもらっていたのですが、迷ったり悩んだりしてしまった時期があって。それで先行することから逃げてしまって、短い距離ばかり踏んでいたんです。 ーー教官は心境を見抜いていたということでしょうか? 萌那 はい、図星でした。それに一喝された後に「高木には期待をしているからこそ言っている。早めに思い切り仕掛けていく経験を積んだ方が、デビュー後に通用しやすい」と、その一喝の背景にあるものを教えてくれたんです。もっと頑張らないといけないと気持ちが変わりましたし、言葉が心に響きました。 ーー養成所生活の思い出を挙げるとしたら、どんなエピソードが思い浮かびますか? 萌那 競走訓練で心が揺さぶられてしまった時期がありました。競走はタイムが良くても勝てないことがあるし、戦法に結果が左右されることも多いです。競走をして、うまくいかないときはキツかったです。自分は競輪家系なので、「できて当たり前」と期待をかけてもらうことがあります。でもうまくいかない時ほど「自分の見られ方」とのギャップが大きくて苦しかったです。 ![](@4) ーー高木候補生は競輪家系「4代目」ですから、周囲から特別視されやすいですよね。 萌那 自転車って普通に乗れるのが当り前じゃないですか? でも競技用の自転車って本当に扱うのが難しくて(笑)。事前養成期間でもまったくタイムが出なくて、本当にヤバいと思いました。正直、事前養成期間で1回挫折しそうになったくらいなんです。 ーーどうやって乗り越えたんですか? 萌那 技能の候補生が入ってきた時に一緒に練習することで色々と吸収することができて、タイムが伸びて行ったんです。それは大きかったと思います。 ーー他の候補生から吸収して自分の血肉に変えていったのですね。 萌那 はい。上手い人のやり方を見て、どうすればいいのか理解することができたと思います。それは挫折しないで済んだ要因のひとつです。 ーーそこからメキメキと頭角を現していくことになったと思いますが、ライバル的な存在とは出会いましたか? 萌那 いいえ。あまり人を基準にしないようにしているので、ライバルは誰それと考えません。自分がライバルという感じです。誰か特定のライバルを作ってしまうと負けた時に「相手の調子がよかったんだ」みたいに言い訳できてしまうと思うんです。自分の責任が薄くなってしまうというか。それにキツい練習をキツいとわかってやるのは自分だし、自分がライバルだと思っている方が壁を越えて行ける感覚になれるんです。 ーーギャップに苦しんだ話がありましたが、競輪家系にくわえて養成所でも好成績をおさめたので、デビュー時の注目度も高いと思います。そこにプレッシャーを感じますか? 萌那 何もできない状況からの「4代目」っていうのはすごいプレッシャーだったんですけど、今は少しずつ成績を残してきているので、デビュー時に注目していただけるなら、それはありがたいことだと思えそうです。デビュー後に力をつけて、そこでも成績を残していけたら、今まで感じたプレッシャーはプラスにも働くと思います。期待と不安なら今は期待の方が大きいです。 ーー期待と不安、数値割合はどれくらいでしょうか? 萌那 期待が8で不安が2です。イイ感じだと思います(笑)。 ーー帰郷してお父さんに卒業の報告をするとき、胸を張って報告できそうですね。 萌那 最初から全部父にみてもらっていたので、ちゃんと報告できそうです。父と一緒にもがけるぐらいにはなったと思うので、次は父をぶっちぎるぐらいの脚をつけていこうと思って頑張ります(笑)。