災害・有事で「経済を止めない」ために...「1日で対応」実現するサプライチェーン強靭化戦略
本格運用前に起こった能登半島地震で分かったこと
そこで新たに開発・導入したEW-Resi.では、富士通のビッグデータ解析プラットフォームや最新のAI技術を採用している。 生産、販売、在庫、部品調達など20の現行システムの業務統合に加え、20万品番を超える在庫部品の紐づけや可視化を行い、生産・販売・在庫を統合的に計画するPSI計画や、部品調達計画などのグローバルレベルでの全体最適化ができるようになった(図参照)。 有事対応においては、地震などで被災したサプライヤーの被災情報や部品の手配状況、影響を受けそうな部品や代替部品の在庫状況などを、即座に抽出・リストアップできるよう機能を大幅にアップデートしている。災害発生時の対応アクションは、平均1日で完了できるようになった。 4月に全社導入されたEW-Resi.が早速その成果を発揮したのが、本格運用前に発生した能登半島地震時の対応だった。 「震度5以上を計測した被災地の情報を抽出し、当該地域のサプライヤーに関わる製品や部品の状況等を可視化すると同時に、供給に影響が出そうな部品や代替部品の供給が可能な他拠点を特定して対応を行いました。EW-Resi.では、そこまでのアクションを即日に完了することができ、結果として生産停止を回避することができたのです」(森下氏) 現在は国内外18拠点の連携を終え、実運用後の2024年度内には海外を含むすべての拠点を連携する予定だという。 「海外拠点では一部、モニタリング等のレベルを国内拠点と少し変えた運用を行います。SCM情報のグローバルでの共有をこのレベルで実現しているメーカーは、日本では他にないと思います」と、森下氏は胸を張る。
労働人口不足の日本、SCMで業務工数も削減できる
EW-Resi.に採用されているのは、多様な領域の先進テクノロジーで構成される、富士通のサービス群「Uvance(ユーヴァンス)」の中核プラットフォーム「Fujitsu Data Intelligence PaaS」だ。 富士通の執行役員EVPグローバルソリューションビジネスグループ副グループ長、大塚尚子氏は、今回の取り組みについてこう語る。 「Fujitsu Data Intelligence PaaSの圧倒的なデータ統合の強みを生かし、短期間で大きな価値を提供することができました。お客様に大きなビジネスインパクトを与えると同時に、社会的価値の創出を目指す我々にとっても、今回の事例はとても大きな成果です」 災害対策が1つのわかりやすい例だが、AIを活用する先進的なSCMは業務効率の改善にもつながるものだ。「パナソニックEW社が他社に先んじて業務工数の削減を目指されたことには、近い将来必ず労働人口不足に陥る日本企業ならではの観点も感じています」と、大塚氏は言う。 グローバルに事業展開するメーカーにとって、もはや欠かせないサプライチェーンのレジリエンス強化。パナソニックEW社のような先進的な取り組みが増えていけば、経済・社会の基盤がより強固なものになるだろう。 西田嘉孝