加速が悪い!? 最高速が落ちた!? スクーターの定番トラブルを解消しよう【ヤマハシグナスX】
Vベルトの回転方向を逆組みするとどうなる!?
ここで紹介する125ccクラスでの人気ヤマハシグナスXは、オーナーが知人から購入した中古車で、入手当初から何となく不調を感じていたそうです。 そこでクランクケースカバーを開けて駆動系を確認してみると、まず最初にVベルトの逆組みを発見することになりました。 装着されていたメーカー純正のVベルトには、部品番号と並んでベルトの回転方向の矢印が明記されています。ところがこの車両のベルトの矢印は「駆動系の回転方向と逆向き」になっていたのです。 メーカーが新車製造時に逆組みする可能性もゼロとは言い切れませんが、おそらく以前のベルト交換時に誤って逆組みしたのでしょう。回転方向を逆向きにすると摩耗しやすいとか切断しやすいといったトラブルがあるのか否か、逆組みした経験がないので断言できません。 しかし、純正部品にわざわざ矢印で明記するぐらいですから、組み付け方向に意味があると考えるのが妥当でしょう。取り外したベルトの側面には「ささくれ」や「ほつれ」など、明らかな摩耗や損傷の痕は確認できなかったので、今のところは大きな問題につながっていないと思われますが、シグナスX用に販売されている社外品のVベルトと比較するとほんの僅かですが幅が狭くなっているため交換します。 続いて取り外したフロントプーリー内部のウェイトローラーも、しっかりと偏摩耗が確認できました。このシグナスXは中古車で購入した車両でベルト逆組みの件もあるため、このローラーが何km程度走行したものかは分かりません。
フロントプーリーの詳細を理解しておこう
冒頭からフロントプーリーと表現してきましたが、実際には複数のパーツで構成されています。シグナスXのパーツリストの表記に従えば、ウェイトローラーが溝に収まって転がるパーツがプライマリスライディングシーブコンプリート(プーリー本体)、転がるウェイトローラーの座面にあるのがカム(ランププレート)、プライマリフィックスシーブ(プーリーフェイス)、カラー(プーリーボス)などです(カッコ内は一般的な名称)。 ウェイトローラーはプーリー本体とランププレートに挟まれながら転がるため、摩擦によって外周が偏摩耗します。そして接触による摩耗は、ウェイトローラーだけでなくプーリー本体とランププレートにも発生します。プーリー本体はアルミ製なので、ウェイトローラーが食い込んで大きく破損することもあります。 純正部品ではそれぞれのパーツが単品で設定されていますが、偏摩耗したウェイトローラーだけを新品にしても、プーリー自体が摩耗していてはローラー交換の意味がありません。 そうした修理需要を見越して、社外品にはVベルト、プーリー本体、ランププレート、ウェイトローラー、プーリーボスなどをセットにした補修キットがあり、現オーナーもそれを準備していたのでまとめて交換します。 フロントプーリーの確認では、ウェイトローラーやローラー溝の状態が重要ですが、それと並んでVベルトの接触面のチェックも不可欠です。プーリー本体とプーリーフェイスの表面(Vベルトの接触面)は滑らかな傘状ですが、摩耗によってテーパー面が波打つことがあります。すると変速中にスライドするVベルトが引っ掛かる原因となります。 また、接触面に摩耗したVベルトが消しゴムかすのように付着していると、Vベルトがスムーズに移動できず変速ムラの原因になることがあり、最外周にカスが残ったまま新品ベルトに交換すると、最高速が低下する原因にもなります。 今回使用する補修キットは純正プーリーフェイスを再使用するため、表面の汚れを取り除いておくことが必要です。
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