加速が悪い!? 最高速が落ちた!? スクーターの定番トラブルを解消しよう【ヤマハシグナスX】
パーツの組み立て順序が分からなくなったらパーツリストで確認する
Vベルトの逆組みに加えて、このシグナスXにはもうひとつのトラップが仕掛けられていました。 プーリーフェイスの外側には本来、ナット、テーパー形状のコニカルスプリングワッシャー、キックペダルと噛み合うワンウェイクラッチが付きますが、この車両はワンウェイクラッチの裏に薄いワッシャープレートも組み込まれていました。 このワッシャプレートは本来、プーリーフェイスの内面とプーリーボスの間にセットされるべきパーツです。最高速アップに効果のあるプーリーボスのショート化を狙ってワッシャーをプーリーフェイス外側にセットした可能性も否定できませんが、ベルト逆組みの件と合わせて考えれば誤組みと判断するのが妥当かもしれません。 分解時にパーツの組み付け順序を確認しながら作業し、不安ならスマホで画像を残しておくことで誤組みはかなりの確率で予防できますが、それでも不安であればパーツリストやサービスマニュアルを確認するのが確実です。特にヤマハ車の場合、PCやスマホで閲覧できるパーツリストが充実しており、作業時にとても重宝します。
Vベルトをセットする際はプーリーとプーリーフェイス間に隙間を作る
ここまではずっとフロントプーリーを取り上げてきましたが、Vベルトをセットする際にはクラッチ機能を持つリヤプーリーにも注目します。 駆動力が伝達されるまで、フロントプーリーのベルトの直径が小さく、リヤの直径は大きいことは冒頭で説明した通りです。新品のVベルトを装着する際は、先にリヤプーリーの溝にはめてからフロントのプーリーボスに掛けます。 この際にプーリー本体とプーリフェイスの間にVベルトが挟まった状態でロックナットを締めると、ベルトがクッション代わりになって充分な締め付けトルクが加わらなかったり、挟み込まれたベルトが回転する際に大きな摩擦が生じてダメージを与える恐れがあります。 そうした状況を回避するには「リヤプーリーの隙間を広げてVベルトを溝の奥にセットする」のが有効です。リヤプーリー側のVベルトの直径が小さくなればフロント側に余裕が生まれ、プーリーフェイスを固定した際にVベルトを挟み込まなくなります。 隙間を広げるには強力なスプリングを縮めるだけの力が必要ですが、その手間を掛けるだけの効果はあります。 これらの作業を行ったことで、発進時に感じたもたつきや最高速の低下といった不満を解消することができました。スムーズにスタートして加速態勢に移行できるようになったのは信号待ちからの発進のたびに実感できるため、オーナーもとても満足しているようです。 エンジンオイル交換のタイミングと違って、ウェイトローラーやVベルトの交換時期は距離だけで判断できない部分もあります。 ちなみにヤマハ車の場合、50~250ccモデルでは2万kmごとの交換が指定されています。しかし加減速が激しく登坂が多いといったシビアコンディションでは1万km交換が目安となるようです。 また走行距離とは別に、発進加速が鈍くなってきた、加速中の速度の伸びにムラがある、最高速が低下してきたと実感できる場合にも、駆動系の確認を行うと良いでしょう。 【POINT】 ▶ポイント1・スクーターの駆動系の不具合はウェイトローラーの偏摩耗やVベルトの摩耗が原因で発生することが多い ▶ポイント2・ウェイトローラーだけでなくプーリー本体やランププレートの摩耗も確認する ▶ポイント3・Vベルトの回転方向の確認や組み付け時の気遣いがスクーターの駆動系を長持ちさせる
栗田晃
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