貯金10万で開業した士業が語る資金準備の正解 (横須賀輝尚 経営コンサルタント)
■お金に苦しんだ開業創業期
私の場合、開業の経緯が少し特殊でした。 新卒で入ったベンチャー企業にリストラされ、ただ単に「もう人に雇われたくない」という気持ちで開業してしまいました。 そのときの手持ち貯金は10万円程度でした。そこにリストラされたときに支払われた解雇予告手当金の約30万円があり、合わせて約40万円程度で開業してしまいました。 「開業資金は少ないほうが必死で頭を使うようになるから、資金は少ないほうがよい」 たしかにこのようなセオリーもあります。1,000万円以上準備して倒産した会社も仕事を通じて多数見てきましたので、お金があることによって余裕を持ちすぎてしまうという法則も理解できます。しかしながら、言葉以上に少ない開業資金というのは苦労の連続でした。 開業資金が少ないと、なんといっても広告費などの販促費の捻出が難しくなります。手持ちのお金が少ないと、ビジネスにかける費用よりも生活費を優先的に考えることになり、結局何もできない状態が続いてしまうのです。そのため、飛び込み営業や紹介営業などなるべくお金のかからない方法に頼ることになりますが、この方法は費用が抑えられる一方で決して効率はよくありません。 結果として、時間はあるが仕事はなく、かといって効率よい営業もできなくなるため、真綿で首を絞められように徐々に廃業のことを考えてしまうわけです。 インターネットから集客する方法も、古い本では「ほとんどお金がかからず……」と謳っていますが、現在はネット営業でも広告費が必要な時代です。そのため、開業資金はできるだけ準備してから開業に臨むのがよいでしょう。 私自身はお金に苦しんだことで、お金のありがたみがわかったことは大きな収穫でした。しかし、お金がないことでお金の心配ばかりすると、精神的にもつらい状況になります。ですから、根拠のない「お金がなくてもなんとかなる」という過信は捨て、開業資金はしっかりと用意すべきといえるでしょう。 横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士
【プロフィール】
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ2,000人以上が参加。著書に『プロが教える潰れる会社のシグナル』(さくら舎)、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、他多数。