SXSWを生んだ街が「奇妙」であり続ける3つの理由【オースティン音楽旅行記Vol.1】
テキサス+メキシコ=テックス・メックス
筆者はこの日、オースティン観光局の音楽マーケティングディレクター、Omar Lozanoさんとランチの約束をしていた。同市の名物料理といえばタコスであり、彼のおすすめはLa Santa Barbachaというメキシコ料理のフードトラック。テキサスとメキシコが地理的に隣接していることから、オースティンはラテン文化とのつながりも深く、人口の3割をヒスパニックが占めている。同州エルパソ出身のOmarさんもその一人で、DJとしても活躍している彼は、ラテン音楽に特化したレーベル「Trucha Soul Records」のオーナーである。 La Santa Barbachaの開放感も実にオースティン的だ。近隣のカクテルラウンジ「The Long Goodbye」、コーヒーショップ「Fleet」、古着マーケット「Howdy’s」と小さなコミュニティを形成し、暖かな日差しの差し込むテラスは緑に溢れている。Omarさんが太鼓判を押すだけあり、タコスはめちゃくちゃ美味しい。 Omarさんは温厚篤実を画に描いたような人で、根っからの音楽好きに重要ポジションを任せているのもオースティンの懐の深さ。彼に音楽事情をレクチャーしてもらった。
オースティンの音楽フェス事情
「世界のライブミュージックの首都」では、SXSW以外にも毎年たくさんのフェスやアートイベントが開催される。 もっとも巨大なのはAustin City Limits Music Festival。シカゴのロラパルーザも手がけるC3 Presentsがプロデュースし、コーチェラと同じく2週に渡って開催。毎年45万人ものオーディエンスが参加している。地元オースティンの食文化やアートを堪能できるのも大きな特徴だ。 OmarさんのイチオシはAustin Psych Fest/LEVITATION。改名や復活を経て2024年は前者が4月、後者が10~11月に開催された。サイケデリックを旗印に先鋭的なミュージシャン/バンドが集う、筆者も長年憧れてきたフェスの一つだ。「オースティンでは13thフロア・エレベーターズやShiva’s Headbandの時代から、LEVITATIONの主催者であるThe Black Angelsに至るまで、サイケの伝統が脈々と受け継がれているんです」とOmarさんは言う。