阿川佐和子×伊藤比呂美「美容院で鏡を見ると《母だわ》って思うんですよ」「日の当たる窓辺で見るとびっくりしちゃう。こーんなババァだったかって」
3月23日、東京・東銀座で開催された「婦人公論ff倶楽部」オープン記念トークイベント。第1部には、本誌でも人気の阿川佐和子さんと伊藤比呂美さんが登壇しました。おふたりが考える、老いや孤独と向き合いながら人生後半を楽しむ方法とは――(構成:田中有 撮影:岸隆子) 【写真】シックな着物姿の阿川さん * * * * * * * ◆ショックなこともすぐに忘れる 伊藤 ここ何年も、美容院で鏡を見ると「母だわ」って思うんですよ。美容院の鏡って特別に意地悪く作ってあるのかしら。 阿川 そうそう。バスルームって暗いから、鏡で見てまぁまぁかなと思って、でも日の当たる窓辺で見るとびっくりしちゃう。こーんなババァだったかって。 伊藤 すごいでしょ。孫ができたとき、抱いた自分の手がね、シワシワで「母の手だ」って思ったの。自分の手だってわかってても、この手は母? 私は誰? みたいな感じで面白かった。 阿川 私、インタビューの仕事で若い女優さんやアイドルに2時間くらい、ずっと顔を見ながら話を聞くんです。その間、その人の動きや表情が私の脳にインプットされて、終わってぱっと鏡を見ると私の顔が映っている。すると、脳が「これは皮膚ではありません! 象です!」って叫ぶんですよ。皮膚というものはツヤツヤ、ピカピカしてるはずなのにって。すごいショック受ける。 伊藤 え、ショックですか? われわれはこれからずっと年をとるから、ショックを受け続ける……。
阿川 大丈夫。ショックもすぐ忘れるから。神さまは嫌なことを忘れる力をくださったんだと、私は思っております。 伊藤 忘れるのね、なるほど。 阿川 次の質問は、 「老後の不安はありますか」。(東京都・56歳) 伊藤 あ、チョーある。どこで死ぬか、犬と猫はどうなるか、ってことが主だけど。 阿川 死に対する恐怖は? 伊藤 それはないです。両親や夫、動物を見送って、「いつか死ぬ。それまで生きる」って、それだけだなってわかっているから。