“2年連続最下位”からの明暗…「立浪監督」と「新庄監督」は何が違ったか 立浪政権は「試行錯誤しているうちに終わってしまった」
うまく回らなかった立浪采配
「中日の今季の敗因は、中田翔(35)の故障と後半戦の不振が大きかったと思います。立浪監督は中田と心中するくらいの覚悟でいましたが、その通りになってしまいました」(名古屋在住記者) さらに、過去2年の敗因は別のところにあるようだ。就任一年目のシーズン終盤、立浪監督はチーム強化策を聞かれ、こう言った。 「できないなら人を変えるしかない。今のままのメンバーで優勝できない。時間はかかるかもしれないけど、思い切って変えていくしかない」 選手の大幅な入れ替えである。事実、立浪監督は二遊間のレギュラーだった京田陽太(30=現横浜)、阿部寿樹(34=現楽天)のトレードを強行し、ドラフトで村松開人(23)、田中幹也(23)、福永裕基(28)ら内野手を複数指名した。計算の立つ中堅選手ではなく、これからの若手選手の伸びしろに賭けたわけだが、翌23年ドラフト会議でも社会人野球で活躍していた津田啓史(21)も指名し、二遊間を守れる内野手を“重複”させた。 「立浪監督は、かつての星野仙一、落合博満両監督のように、補強などのチーム編成に関する全権を委ねられた指揮官でした」(前出・同) 「選手の獲得」には労を惜しまなかった。ペナントレース中でも時間を割いて大学野球のリーグ戦も視察し、オフにはドミニカ共和国で開催されるウィンターリーグにも足を運んだ。メジャー通算41本塁打を放ったアキーノ(30=現メキシコリーグ)、カリステ(32)を見出し、23年オフに契約したディカーソン(34)にしても何度も映像を見て、獲得にゴーサインを出した。外国人選手は“ハズレ”も多かったが、現役ドラフトで細川成也(26)を獲得しており、選手の素質を見極める眼力はたしかだった。 「立浪監督の下でレギュラーに定着したのは、岡林勇希(22)、細川。福永たちも一軍戦力ですが、村松、田中、カリステらとポジションが重複しています。みんな二遊間を守る内野手です。さらにまた津田を獲ったため、彼らの出場機会が限られ、経験を積ませる機会が少なくなってしまいました。出場機会も限られてくるので、レギュラーが決まるまで時間が掛かりそう」(前出・同) 「できなければ入れ替える」という厳しい姿勢もプロの世界では必要だが、「若手に経験を積ませて育てる」点で、こんな指摘も聞かれた。育てる優先順位を見誤ったのではないか、というものだ。最初に着手すべきは「打線の中核」となる4番候補であり、それが石川昂弥(23)だった。 「怪我もあり、立浪監督が使いたくても使えなかった時期もありました。石川が守れるポジションはファーストか、サード。サードには高橋周平(30)がいて、ファーストに中田を補強した時点で石川の出番は限られてしまいました。今季後半、中田がファーム再調整となって、ようやく石川が一塁のスタメンで出場できるようになりました」(前出・同) その一塁にしても、立浪監督は石川ではなく、カリステを起用する日があった。東京ヤクルトとの僅差での最下位争いが続き、この「負けられない試合」が若手よりも実績重視の起用、あるいは「調子を落としている選手を他の若手に代えて」という采配になった。 「立浪監督に『我慢しても使いたいと思わせる選手』が少なかったとも言えます。今季に限っては怪我で出遅れた岡林をシーズン中盤から使い続け、後半に結果が出始めました。若手の成長には時間が掛かるもの。中日の打線低迷は立浪監督が就任する前からのチーム課題でした。試行錯誤しているうちに終わってしまった印象です」(球団関係者)