写真上が「手と腕が何もせず体を回す(割合0)」、写真下が「体を回さずに腕だけを古(割合10)」。手と腕を使う割合を減らすことで、インパクトのフェース向きは安定し、球筋の安定につながる

一昨年の全米女子アマを制し、23年12月のプロテストで合格した馬場咲希プロを、中学1年から指導しているのがプロコーチの坂詰和久（さかづめかずひさ）、通称『わきゅう』だ。坂詰コーチと20年以上の付き合いがあるベテラン編集者Oが、謎キャラコーチの気になる話を聞き出す。今回は「球筋の安定」がテーマだ。

手や腕を使う割合をいまよりも減らすことが重要

O編　今回のテーマは、ショットがいいときと悪いときの差が激しい人、球筋が安定していない人の練習法だったよね。いいショットの数を増やし、ミスショットの数を減らすにはどう したらいいのか、教えてもらおうかな。 坂詰　まず、前回も話しましたが、基本的に体に対するクラブの軌道は、いいときも悪いときもそれほど変わりません。じゃあ、いい球が出るときと、球が曲がるときでは何が違うのかと言ったら、インパクトのフェース向きが違うわけです。いつもより球が右に出たときは、いつもよりフェースが開いて当たっている。いつもより左に出たときは、いつもよりフェースがかぶって当たっているんですよ。 O編　つまり、球筋が安定していない人は、それだけインパクトのフェース向きが不安定だってことだね？ 坂詰　そういうことです。基本的に、球筋の安定している人ほどフェースのコントロールが上手く、インパクトのフェース向きが安定しています。ですから、今よりも球筋を安定させたかったら、そのあたりがテーマになると思います。 O編　なるほどね。じゃあ、インパクトのフェース向きを安定させるためにはどうしたらいいの? 坂詰　大事なのは、体と腕の連動性を高めることです。体を止めて腕を振るのではなく、常に腕が体の正面にある状態で体を回旋させて打つスウィングに少しでもいいから近づけていく。そうすることで、インパクトのフェース向きというのは安定してくるんですよ。 O編　それは、いわゆる手打ちを直すってことかな？ 坂詰　手をまったく使うなって言ってるわけじゃないですよ。手は使ってもいいと思うんです。手打ちは悪みたいに言われることが多いんですけど、プロだって腕を振っている選手はたくさんいますからね。ただ、手や腕を使う割合＝体と腕が分離する割合が大きくなるほど、インパクトのフェース向きが不安的になるので、球筋を安定させたいなら、その割合を減らしたほうがいいってことなんです。 O編　手や腕を使う割合って? 坂詰　手と腕が何もしないで、体を回して打ったら、手や腕を使う割合がゼロってことです。逆に、体をまったく回さず、腕だけを左右に動かしたら、手と腕を使う割合が10割になるわけです。まぁ、さすがにそういう人はいませんけどね。 O編　さっき、手は使ってもいいって言ってたけど、手や腕を使う割合をゼロにする必要はないってことだよね? 坂詰　そうですね。手や腕をまったく使わないのはプロでも難しいので、そこまでする必要はありません。完全に手を使わない動きを目指すのではなく、今より少しずつでいいから手や腕を使う割合を減らして、体で打つスウィングへ近づけていく。そんなふうに考えてもらえたらいいんじゃないでしょうか。 O編　手や腕を使う割合が大きいうちは、いいフェース向きで当たる確率が上がらないってことだね。 坂詰　いやぁ、球をたくさん打てば、タイミングが合う確率は上がると思いますよ。ただ、かなりの練習量が必要になっちゃうんです。さらに、練習量が減った瞬間に、当たる確率が下がってしまう。逆に、体と腕が連動するほど、タイミングに左右されにくくなるので、練習量が少なくても、そんなに悪くなることがないんです。だって、極端な話、手と腕が何もしないで、体を回してスウィングできたら、クラブは必ずアドレスの位置に戻ってくるわけですから。 O編　わきゅうがプロを教えるときには、完全に手先を使わないスウィングを目指すの？ 坂詰　もちろん、それが理想ですけど、いきなりそれを求めることはないですね。さっきも言ったように、プロでも完全に手の動きを抑えるのは難しいですから。アマチュアよりは高いレベルにはなりますが、プロの場合も、少しずつ理想に近づけていくような指導をしています。 O編　じゃあ、腕と体を連動させるには、どんな練習をしたらいいの？ 坂詰　それはもう、リードアームとリードフットを意識した練習ですよ。 O編　左手と左脚ってことだよね。 坂詰　ええ。基本的に、ゴルフのスウィングは左サイドがリードしていくので、その感覚を身につけていくのがいいんじゃないでしょうか。 O編　じゃあ、来週はそのあたりを詳しく聞いていこうかな。 坂詰　わかりました。 ※週刊ゴルフダイジェスト2024年7月23日号「ひょっこり　わきゅう。第73回」より