手間がかかる議事録はAIを使ってサクッと作ってしまおう
本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第2回はAIで議事録作り。 【もっと写真を見る】
本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。 AIは手間を減らしたいタスクに活用する AIを活用するなら、まずは手間を減らしたいタスクに活用することをお勧めする。実際に、目の前の作業時間が短くなれば、AIの有用性を体感でき、AIを活用しようというモチベーションが上がるからだ。いくつか、考えられるが、今回は「議事録の作成」を取り上げる。 皆さんも仕事で会議に参加することは多いだろう。その中で話し合われたことを共有したり、後でトラブルにならないように、会議の後に議事録を作成しておく必要がある。このタスクは、新人に割り振られることが多い。 新人に任せる建前の理由はいくつかある。業務の内容や業界の事情に対する理解を深め、社内で行われる会議の作法を学び、会議の内容を腹落ちさせるのが目的というもの。そして、上司は新人がどのくらい会議の内容を把握したのかをはかることもできる。 しかし、この議事録作成はとても作業負荷が高い。1時間の会議を録音し、きちんとした議事録を起こすには、まず3~5時間かけてテキストに起こす必要がある。その後、要約しながら重要ポイントを抜きだしてコピー&ペーストし、体裁を整えていく。慣れていなければ、1日がかりの作業となるだろう。 それでも議事録が社内で共有されて活用されて評価されるなら、まだいい。ほとんどの場合、議事録は作成することが目的となっており、二度と日の目を見ることはない。新人だとしても、ちょっとモチベーションの上がらないタスクだろう。 AI文字起こしサービス「LINE WORKS AiNote」で録音からテキストを生成 こういう作業こそ、AIを活用したい。まず、録音データをテキストに起こすなら、「LINE WORKS AiNote」がお勧めだ。これまでの「CLOVA Note β」として提供されてきた文字起こしAIサービスで、個人事業主やフリーランス向けにフリープランも用意されている。現在はサービスの移行期間中で、2025年3月下旬に「CLOVA Note β」のβ期間が終了し、2025年春頃に正式版「LINE WORKS AiNote」の有料プランがリリースされる予定だ。とはいえ、もちろん今でもフリー使えるので試してみよう。 「LINE WORKS AiNote」のウェブサイトから「今すぐはじめる」をクリックしアカウントを作成する。ログインできたら、録音した音声ファイルをアップロードしよう。日本語以外にも、英語、韓国語、中国語の文字起こしもできるので、その際はプルダウンメニューから変更しておく。 既存のLINE WORKSユーザーであれば、管理者画面から「LINE WORKS AiNote」を追加すればいい。 録音時間は最長で180分なので、長時間の総会やセミナーの文字起こしをするなら録音を分割しておくこと。対応するファイル形式は、.m4a、.mp3、.aac、.amr、.wavとなる。ファイルをアップロードすると自動的に変換が始まり、しばらく待つと文字起こしが表示される。 ウェブサイト上で、文字起こしを修正することができる。発言者ごとに「参加者 1」のように話者分離されているので、名前を一括変換しておくと議事録を作りやすくなる。また、音声を誤認識している部分はクリックすると再生されるので、直接修正できる。 もし、全文を音声を聞きながらチェックするとしても、ほぼ等倍の時間で済む。従来は3~5倍の時間がかかっていたことを考えれば、大きな時短となる。 問題なさそうであれば、右上の矢印アイコンをクリックし「音声記録をダウンロード」をクリック。文字起こしのテキストファイルをダウンロードしよう。 生成AI「ChatGPT」に要約や議事録を作成してもらう 議事録の作成は「ChatGPT」にやってもらおう。「ChatGPT」にログインしたら文字起こししたテキストファイルをドラッグ&ドロップでアップロードし、まずは「要約してください」とプロンプトを入力しよう。さくっとまとめてくれるので、内容を把握する際に便利だ。 「ChatGPT」の無料プランを使っている場合は、回数制限があり、何度か使っていると数時間待たされることになる。ビジネスでがしがしと利用するなら有料プランにすることも検討しよう。 ■プロンプト 会議の録音から文字起こししたデータを添付するので、内容を簡潔に500文字の文章で要約してください。 ■出力 この会議では、サポート部門へのAIチャットシステム導入について議論されました。主な課題として、問い合わせ件数の増加、オペレーターの負担、待ち時間の長さ、24時間対応のニーズ、離職率の増加、教育コストの上昇が挙げられました。導入により、業務効率化、顧客満足度の向上、コスト削減が期待されます。一方で、初期費用やメンテナンスコスト、AIの誤応答リスク、顧客体験への影響などのデメリットも指摘されました。最適なツール選定やPoC(概念実証)の実施、運用ルールの整備が重要とされ、成功事例や失敗事例から学びつつ慎重に進めることが提案されました。 では、同様にプロンプトを入力し、議事録を作ってもらおう。単に議事録を作って、と入力すると、会議日時や目的、議題と内容などをまとめてくれた。録音ファイルを「LINE WORKS AiNote」でテキスト化し、「ChatGPT」にそのテキストを入れて1文入力するだけで議事録を作成できるのだ。 ■プロンプト 会議の録音から文字起こししたデータを添付するので、議事録を作ってください。 ■出力 会議の目的 「サポート部門へのAIチャットシステムの導入」に関する検討および課題整理 議題と内容 1. 現在のサポート業務の課題の整理 問い合わせ件数の増加 繁忙期や新商品リリース後の問い合わせ増加(通常の1.5倍) 毎月の月末やキャンペーン期間でも問い合わせが増加 ~以下略 とはいえ、シンプルなプロンプトだと、話した内容をすべて箇条書きにしているだけでまとまっていないこともある。会社によっては議事録のフォーマットやテンプレートがあることも多く、このままでは使えないかもしれない。そこで次回は、望んだフォーマットでChatGPTに議事録を作ってもらう方法を紹介する。 注目の最新AIニュース パナソニックHDとPHP研究所が生成AI技術を活用した「松下幸之助」再現AIを開発したと発表した。松下幸之助氏のように講演や対談など、膨大な発言記録がある場合、AIによる再現クオリティはとても高くなりそう。人の思考と話し方を究極的に再現するDigital Humanの生成、という大風呂敷もリアリティがある。実際に、経営会議に松下幸之助氏の再現AIが参加するというのもありだろう。兎にも角にもAIで人格を再現するにはデータが必要になる。以前「P.A.I.(パーソナル人工知能)」を開発するAIベンチャー オルツに取材したときに、3年分くらいのデータがあればその人らしさを再現できると言っていた。筆者も、将来を見据えて、考え方や趣味嗜好などをブログやSNSにまとめておこうかと考えている。 文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水