三菱UFJ銀行の「異動」が変わる。公募活性化によるキャリア自律支援とは
現在の仕事で成果を出すことも「挑戦」
――公募で特に人気のある部署はありますか。 関舎:専門性が身につき、キャリアアップに役立ちそうな仕事ができる部署は人気がありますね。デジタル領域の部署などは最先端の仕事ができるイメージがあるので、大変人気です。 下津:実は、人事も人気があるんです。変革を推進できるというイメージがあるのかもしれません。 ――お話をうかがってきて、公募プログラムに限らず貴社のカルチャー自体が大きく変わっているのではないかと感じました。 下津:現在の経営陣の影響も大きいと思います。マザーマーケットである日本の競争環境の厳しさに対峙し、変革をリードするというメッセージを出しています。 2019年と現在を比較すると、店舗数は600店舗からおよそ300店舗に集約されました。リテールの窓口の従業員の方は「銀行はどうなってしまうんだろう」と感じていたかもしれません。今後は店舗数をそこまで減らさず、むしろ駅ナカに新規出店するなど、新たな方向性に向かっていきます。このような変化も、今後のマインドセットに良い影響を与えてくれると考えています。 ――公募プログラムや従業員のキャリア自律の推進に関して、課題はありますか。 関舎:「成長と挑戦」というキーワードで公募プログラムを推進してきたため、一部従業員の方は「挑戦=異動」と認識していることもあります。しかし、挑戦は必ずしも異動だけではありません。現在の業務に向き合い変革し、成果を出すことも挑戦です。そのため、挑戦のエネルギーを公募だけでなく、現在の業務で発揮してもらうことが、次のステップだと考えています。 下津:変わり続ける競争環境の中でお客さまにサービスを提供していくためには、従業員一人ひとりのプロフェッショナリズムを向上していく必要があります。今後はその点に注力していきたいですね。 具体的には、業務のプロフェッショナル度を上げることを意識し、人事制度の改定も予定しています。2025年4月からは総合職・BS職といった垣根をなくし、「プロフェッショナル職」に一本化。その名の通り、現在の仕事に対してプロ意識をもって専門性を上げていくことを目指すものです。 ――公募プログラムや従業員のキャリア自律の推進について、今後予定していることや展望をお聞かせください。 下津:24年4月からは「資格Ex制度」を開始します。異動せずに同じ領域でキャリアを築いていく従業員がプロ意識を高められることを目的とした制度です。領域ごとに、「スキルセットに応じてこのくらいの報酬を支払う」という形にしています。 関舎:管理監督者層のほぼ全ポストについて、ジョブディスクリプションを明確化する動きもあります。公募においては、そのポストに求められるスキルや経験、どのような自己学習が必要かをまとめていますが、さらに先のキャリアに進むには何が必要かを示すことで、キャリアをどのように歩むべきかを従業員それぞれが考えられるようにしたいと考えています。 下津:若手を抜てきするための動きも続きていきます。当行には資格があり、それに準じた職務の幅がありますが、上位資格が担当する職務につくことも認める運用も始めています。本来なら就けない職務に対して、若手が手を挙げることも可能です。今後も従来の銀行のやり方にとらわれず、新しい人事施策を実践していきたいと考えています。
プロフィール
下津 健生さん(株式会社 三菱UFJ銀行 人事部 企画グループ 次長) 関舎 直博さん(株式会社 三菱UFJ銀行 人事部 企画グループ 上席調査役) 竹内 順子さん(株式会社 三菱UFJ銀行 人事部 企画グループ 調査役) 今林 睦巳さん(株式会社 三菱UFJ銀行 人事部 採用・キャリアグループ 調査役)