日銀短観(12月調査)で景況感は小幅改善か:2024年日本経済は「内憂外患」。賃上げは期待に届かず日銀政策修正は後ずれへ
2024年の日本経済は「内患外憂」
2024年には輸出環境の悪化も予想される。日本の最大の輸出先である中国の経済の低迷は続いている。政府による経済対策がなお限定的な規模に留まる中、不動産不況の継続やそれに関わる不動産開発会社の社債のデフォルト、不動産関連に投資する理財商品、信託商品のデフォルトなどから、金融が混乱すれば、経済の失速につながりかねない。 他方、日本の第2の輸出先である米国経済については、7-9月期の実質GDPが前期比年率+4.9%と上振れた。しかし、アトランタ連銀のGDPNowによると、現時点での10-12月期の実質GDP成長率見通しは前期比年率+1.2%と、大きく下振れる見通しだ。10月の雇用統計や住宅関連指標には弱さも見られており、昨年来の大幅な利上げや長期金利の上昇の影響から、来年の成長率は大きく下振れる可能性も考えられる。中国に続いて米国経済の減速も明らかとなれば、日本の輸出環境がにわかに厳しさを増す。 このように、2024年も物価高、実質賃金の低下が個人消費の逆風となり、また春闘の結果を受けた賃金上昇への失望が、個人消費の下振れにつながる可能性がある。さらに海外景気の減速による輸出環境の悪化も、国内景気の逆風となり得るなど、2024年の日本経済は「内患外憂」に晒されることになろう。
日銀は2%の物価目標達成を宣言できない
金融市場では2024年の春闘で高い賃金上昇率が実現し、それを受けて日本銀行が2%の物価目標達成を宣言し、4月の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決める、との見方が多くされている。しかし実際には、その可能性は高くないだろう。 日本銀行が2%の物価目標達成を宣言するトリガーとなる賃金上昇率の水準が、どの程度であるかは明らかでない。一部にはベースアップで+3%が基準になるとの見方もあるが、+3%のハードルはかなり高い。 また日本銀行は、2%の物価目標達成を宣言することに慎重だろう。それは長期金利の急騰や急速な円高を招き、金融機関の経営や実体経済に甚大な打撃を与える可能性があるからだ。 しかし他方で、日本銀行は、現在の金融緩和の枠組みには副作用が大きいことから、2%の物価目標達成いかんにかかわらず、それを修正したいと強く考えているのではないかと推察される。そこで、2024年の春闘での賃上げ率は期待されるほどの水準に達せず、2%の物価目標達成との宣言を出すことはできない中でも、結局は、マイナス金利政策解除に踏み切るのではないかと予想される。