パリ五輪開会まで1カ月 テロ脅威不安定な政治情勢 不穏な空気に包まれた平和の祭典
【パリ=板東和正】パリ夏季五輪の開会まで26日で1カ月となった。大会を控え、イスラム過激派などによるテロへの脅威が増大。極右の躍進が予想される国民議会選が開幕直前に実施される政治情勢の不安定さも懸念材料となっており、平和の祭典は不穏な空気に包まれている。 【地図と写真でみる】パリ五輪の主な会場 ■高まるイスラム過激派テロの脅威 「イスラム過激派のテロは依然としてわれわれの最大の懸念だ」 パリ警察のローラン・ヌニェス長官は21日、記者団にそう打ち明けた。 パリ五輪は約1万人の選手を迎え、国内外から1500万人以上の観光客も見込まれる。新型コロナウイルス流行で競技の大半を無観客とした2021年の東京五輪と異なり、パリ五輪でテロがあれば観客も巻き込まれるリスクが高い。 近年はイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に関連したテロの脅威が拡大。3月下旬にはロシアの首都モスクワ郊外で銃乱射テロが発生し、ISが犯行声明を出した。フランスでも4月、ISに触発されたとみられる16歳の少年がテロを計画したとして仏当局に逮捕された。イスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ情勢の影響で、イスラエル選手らが狙われるテロも危惧される。 ■「開かれた開会式」に危機感 仏政府は五輪期間中に軍兵士を動員するなど警備を強化する計画だが、警備要員が約400人不足しているという。 特に、夏季五輪史上初めて競技場外で開催される7月26日の開会式がテロの標的になる危機感が高まっている。 仏政府は「広く開かれた大会」を開会式で印象づけるため、各国選手らを乗せた船180隻がセーヌ川の水上をパレードする計画を立案。17日には予行演習が行われた。 ただ、曲がりくねって流れるセーヌ川沿いはドローンや狙撃兵に狙われやすい。開会式当日は約30万人以上が両岸から式を見守る予定で、仏情報機関は「リスクが高すぎる」と懸念を示した。仏政府は警察や憲兵隊約4万5千人を投入して厳重な警備態勢を敷く方針だが、政府内ではパリ郊外に会場を変更するよう求める声もある。セーヌ川ではトライアスロンなどの競技も予定されているが、水質汚染が続き、実施が不安視されている。 ■下院選結果で「内戦」の恐れも