「レミパン」はこうして生まれた、人気フライパンを作った町工場の挑戦
鍋を振った時に食材が飛び散らない鍋の内側の角度や、持ち手の厚み……。具体的で細かい注文がついた。それで、再度、試作品を作り直して、という過程を繰り返したという。
「今のように3Dプリンターがないので、金型を一から作り直す必要があった。金型代だけで相当かけました」と智博さん。その総額は、最終的には「ベンツ3台分」ほどになったのだという
レミパンの特徴である蓋には、縁以外にも役立つ仕掛けがある。その一つが、真ん中にある「差し水」をするのに便利な穴だ。ギョーザなどを焼くときにもいちいち蓋をあけずに水をいれることができ、周りに飛び散らない。それも、「穴を開けたいの」「今までにない新しいことをしたい」というレミさんのアイデアから生まれたという。後にオダジマと共同で特許を取得している。
「うちは雑貨屋だったから、あまりフライパンの固定観念がなく、レミさんが納得いくまで言われたことに取り組んだのが良かったのかもしれません」と智博さん。名前貸しレベルの「監修」ではなく、がっちりタッグを組んだ開発だったのだ。
オリジナルレシピブックも
そうしてレミパンは2000年1月に出荷が始まる。レミパン用のオリジナルレシピブックを付けたのも画期的なら、蓋付きで1万円というこれまでの国産フライパンにはなかったような高額で売り出したのも珍しかった。
「その商品で実際にどんな料理をどう作るのかというレシピ本を付けたものは当時、あまり見当たらなかった。それも毎日使ってもらえるようにという思いからなんです」と直人さん。
レミさんがテレビのバラエティー番組などで使ったことで認知度が上がり、実際に使ったユーザーからの評価の高さがギフトとしての需要も生まれた。月産3万個を超えたこともあるベストセラー商品となった。
直人さんは「レミパンを作ったおかげで、我々は『こういうものも作れるんですよ』と外にアピールできるようになった」。
発売から25年たち、レミパンは、デザインを見直した「レミパンプラス」など商品のラインアップも広がり、フライパン部分の製造は外に委託するようになった。ただ、今でも、特徴的な蓋は「オダジマ」が作る。「レミさんが納得いくまで我々にダメだしをしてくれたおかげで、長く愛される商品になったと思います」と智博さんは話している。