なぜ中国人は高田馬場を目指すのか――「ガチ中華の街」になった高田馬場と歌舞伎町の二都物語
「競合したら中国人経営者を選びます」
こうした食堂が進出し始めたのは、2017~18年の出来事だ。中国福建省に本店を構え、中国本土で6万店を展開する「沙県小吃(サケン・シャオチー)」というチェーン店が、海外進出第一号店の場所に選んだのも高田馬場だった。 残念ながら「沙県小吃」高田馬場店は閉店してしまったが、2023年に上野店がオープンし、多くの在日中国人から支持を集めている。 この沙県小吃と並び、「ガチ中華ブーム」の火付け役となったのが、「蘭州ラーメン」だ。 蘭州ラーメンは中国・西北部の甘粛省蘭州発祥の麺料理。牛骨などで取ったスープと、細い麺が特徴であり、パクチーやラー油を浮かべて食べることが多い。 高田馬場駅を出てすぐ、ロータリーの先にあるビルの地下1階に「楼・蘭州拉麺」というお店がある。オープンは2021年。同じビルにはドン・キホーテが入居しており、中国人のほか日本人のガチ中華ファンらしき姿も多い。 また近年、Instagram等のSNSで「映え」ると若い世代に人気なのが「火鍋」。中国の鍋料理で、熱々のスープに具材を入れてしゃぶしゃぶのように食べる。白い「白湯スープ」と赤い「麻辣スープ」の2種類が用意され、2つのスープが混じらないよう中を仕切った専用鍋を用いる。高田馬場にも多く出店しているが、中国人向けの辛い火鍋を出す店もある。 また、最近急速にお店が増えているのが「麻辣湯」。四川省発祥と言われるピリ辛のスープで、春雨や野菜など好きな具材をチョイスできる。お昼時になるとランチで訪れる会社員も多いようだ。 ほか、近年中国本土で急速に増えているという「COTTI COFFEE(コッティコーヒー)」も、2023年に高田馬場店がオープンしている。 高田馬場駅前で地域密着型の不動産業を営む男性は、中国人経営の店舗は今後も増えると予想する。 「表通りに面した元飲食店の居抜き物件でさえ、家賃は70万~80万円。契約時には敷金、礼金とは別に家賃10カ月の保証金が必要ですが、ほとんどの場合、即日、日本円の現金払いです。身元もはっきりしているし、家賃を値切ったり、支払いが滞ることもない」 そう言った上で、男性は私の耳元でこうささやいた。 「競合したら中国人経営者を選びます。金払いがいいんです」