松本幸四郎さん&尾上松也さん「お互い『勝負』だと思っています!」舞台『朧の森に棲む鬼』ダブルキャストで演じる二人にインタビュー
劇団☆新感線の舞台『朧の森に棲む鬼』が、歌舞伎の新作として生まれ変わる。主人公をダブルキャストで演じる二人がバイラに降臨。 写真多数! 松本幸四郎さん&尾上松也さんインタビュー
お互い「勝負」だと思っています!
■17年ぶりの再演に歌舞伎の後輩たちも心を躍らせている 歌舞伎俳優らしからぬ攻めたスタイルに、不敵なまなざしの松本幸四郎さんと尾上松也さん。それだけ気合を入れて臨むのは、今年11月から新橋演舞場と来年2月博多座で上演される歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』。17年前に幸四郎さん主演で上演された劇団☆新感線の不朽の名作を歌舞伎にした新作だ。二人は舌先三寸で頂点にのし上がる極悪人・ライをダブルキャストで演じる。 松也 「劇団☆新感線の舞台は昔から大好きで、『阿修羅城の瞳』をはじめ、幸四郎のお兄さんが出演された作品はいつも観に行っていました。中でも『朧の森に棲む鬼』は、お兄さんが本当にかっこよくて、僕たち後輩の憧れだったんです。ですので今回ダブルキャストと聞いたときは嬉しい半面、恐れ多いという気持ちが強くて。ですが、皆さん楽しみにしてくださっておりますし、今はお兄さんと一緒に上演できる喜びを日々実感しています」 幸四郎 「僕が劇団☆新感線に出はじめた頃は、今のように歌舞伎俳優がエンターテインメント性の高い作品に出ることは珍しかったんです。そんな中で歌舞伎役者と名乗って『いのうえ歌舞伎』(劇団☆新感線の時代もの)に出る以上、絶対かっこよく見えないといけないと思って、すごいプレッシャーでした。結果、皆さんに喜んでもらえましたけれど、それも昔の話。今回は歌舞伎NEXTとして新しく上演されるわけで、そこでどれだけ存在感を出せるか。松也くんとは勝負だと思っています」 互いへのリスペクトとライバル心で、より高みへと昇っていく二人。かつて演じた幸四郎さんのライは、その外道っぷりがシビレるほど素敵だったけれど、松也さんのライも間違いなくゾクゾクさせてくれるはずだ。 ■半端ないセリフ量に頭がパンパンになる!? 来年は、宝塚歌劇で作品が上演されるなど、人気の高い劇団☆新感線。ケレン味あふれる演出は歌舞伎にも通じるところがあるが、かつてその舞台に出演したとき、演出家のいのうえひでのり氏に「鍛えられた」と二人は口をそろえる。 松也 「『メタルマクベス』で初めて出演させていただいたときに感じたのは、歌舞伎のアプローチととても似ているということでした。歌舞伎では、まず先輩にお役を教えていただいて、その軌道に乗った上で自分の気持ちを寄り添わせていくのが基本ですが、いのうえさんの演出もまさにそうで、歌舞伎俳優との相性のよさを感じました。 一方で、『ここは右を向くと思ったらジャンプして後ろに飛ぶんだ!?』みたいな予想外なことがたくさん起きるので、それにどう対応するか。いのうえさんが言うところの“演劇的運動神経”をどれだけ発揮できるかが役者として試されるところです」 幸四郎 「劇団☆新感線では、『ここでこう動いて』『セリフはここで切って』といのうえさんの指示が第一なんです。だけどそれが常に最高の選択肢なので、僕も納得させられてしまうんですね。たとえば『ここで上手から舞台袖に入って、次に花道から出てきたら絶対かっこいいよね』とか。ただ、それには役者は全力で走らないといけなかったりします(笑)。 殺陣(たて)にしてもチャリンチャリンと刃をがっつり合わせて、パッと離れた一瞬に会話をするのも新感線らしいところだったりしますけれど、これをかっこよく見せるにはクオリティの高い殺陣を習得しないといけない。しかもその連続の3時間半だったりするんで(笑)、体力の消耗は激しいし、セリフの量も半端ない。おかしくなるくらい頭がパンパンになるんですね。まあ、自分が頑張ればいいっていうだけの話なんですけど」 噓で天下をとるライもこれまた恐ろしいほどのセリフ量で。 幸四郎 「そうですね。最近、セリフの多い役が続いていて……。今月、覚えたセリフで、なんとか次の芝居ができないかと考えています」 松也 「いやいや、それダメですって。それより体力のほうは大丈夫ですか」 幸四郎 「チョコザップに入ったから大丈夫」 松也 「ライザップにしてくださいよ!(笑)」 などと軽口をたたく二人だが、舞台にかける思いは誰よりも熱い。中村時蔵、尾上右近、市川染五郎と、豪華花形俳優を従えての魂を揺さぶる圧巻のステージ、見逃せない!