なぜ八村塁はNBA挑戦1年目から成功しているのか?
同遠征をウィザーズは1勝3敗と負け越し。この3敗を八村は次のように捉えた。 「この負けを忘れたり、怒ったりするだけじゃなくて、しっかりと次に繋げなきゃいけない」。 八村が話した「次へ繋げる」は、冒頭のフォイスがずっと見てきた姿だった。 ルーキーとしてNBAでこれほどの活躍を見せる八村だが、ゴンザガ大に入ったばかりの時は、決してそうではなかった。 将来NBA選手になれる逸材とはコーチ陣もわかっていた。しかし「彼は自らが持つ能力をどのように生かせばいいのかをわかっていなかった」とフォイスは言う。 同級生として入学したザック・コリンズ(現ポートランド・トレイルブレイザーズ)とフランス人のキリアン・ティリー(現ゴンザガ大4年生)はすでに出来上がった選手で、1年生の時から出場時間を得ていた。しかし、まだ英語も話せず勉学を優先しなければならない八村は戦力には入っておらず、練習では彼らのような扱いは受けていなかった。それに加え、今では親子のような存在だが、1年生の時はマーク・フューHCの厳しさを理解できず、苦しんでいた。そんな時に「NBAに行ったらフューコーチが凄く優しく感じるよ。NBAのコーチなんて本当に酷い」と励ましてくれたのがフォイスだった。 また八村を同大にリクルートしたトミー・ロイドアシスタントコーチからは「きつくなかったら目指す意味がない。目標は大きいほど到達するのが大変で、きついからこそ、あとで凄いものが待っている」と言われ、辛い日々を乗り越えてきた。 八村はフォイスとロイドから言われたこれらの言葉をはっきり覚えており、ドラフトを前に、夢を叶えるために頑張れた二人からの言葉を思い返していた。 八村は大学時代、窮屈な勉強を時に投げ出したくなりながら頑張り続け、バスケットの技術を高く積み上げていった。フォイスは逆転勝ちをするゲームを見るかのように、八村のそんな3年間を見てきた。だからこそ、どれだけ注目されても、重圧がのしかかっても、自らのやるべきことに集中し、次に繋げていく八村が想像できるのだという。 今はウィザーズで、大学時代よりももっと多くのコーチらが八村の将来を信じて指導育成に努めている。そして、ますます出場時間が増えている実戦で身をもって学んでいる。自らの目標を達成するためにしっかり地に足をつけて臨んでいる。 だからこそ、今の八村があり、これからの八村がある。 (文責・山脇明子/米国在住スポーツライター)