厚生年金要件、「週20時間」のみに 「106万円の壁」解消へ 厚労省
厚生労働省は8日、サラリーマンに扶養されるパートら短時間労働者が加入する厚生年金の要件を「労働時間週20時間以上」に一本化する方向で調整に入った。 最低賃金の上昇で「月額8万8000円以上」とする賃金要件が事実上解消される実態を踏まえた措置で、保険料負担が生じる「106万円の壁」はなくなる。来年の通常国会に提出する公的年金の制度改正関連法案に盛り込み、早期の導入を目指す。 厚生年金の加入で老後の年金額を手厚くする狙いだが、106万円の壁解消に伴い、年収を問わず保険料負担が生じる。全体で200万人が新たに加入する見込み。 厚生年金の賃金要件は106万円の壁と呼ばれ、パートらが保険料負担を避けるために働く時間を抑制する要因とされていた。最低賃金が全都道府県で時給1016円以上になると、週20時間働けば賃金要件の月8万8000円を満たす。 現在、最低賃金が1016円以上なのは東京など12都府県。全国で最も低い秋田(951円)など残る35道県でも現在の賃上げペースが続けば、来年にも1016円以上に達し、賃金要件が全国で事実上撤廃される。 厚労省は企業規模に関する要件もなくし、50人以下の企業も対象に加える方針。5人以上のフルタイム相当の従業員がいても例外的に厚生年金が適用されない一部の個人事業所も対象に入れる。一方、学生を適用対象外とする要件は残す。 パートで働きながら、「第3号被保険者」として保険料を免除されてきたサラリーマンの配偶者は、106万円の壁が解消することで保険料負担が新たに生じる。負担増を避けようと週20時間以内で就業調整する可能性もある。 このため、政府は従業員の手取りが減らないよう賃上げに取り組む企業に助成金を支給する取り組みの拡充を検討する。 年収の壁を巡り、自民、公明両党と国民民主党が所得税が課される「103万円の壁」の見直しに向けて協議している。