ブラックストーン、AI時代先取り-新たな領域の不動産投資に挑む
(ブルームバーグ): 2022年終盤にブラックストーンの不動産事業を揺るがす最大の嵐がピークに達した時、ナディーム・メグジ氏は新婚旅行中だった。
プライベートエクイティー(未公開株、PE)投資大手の同社は、ブラックストーン・リアル・エステート・インカム・トラスト(BREIT)からの資金引き出しを制限したところだった。
BREITはブラックストーンが個人投資家から資金を集めるファンドの先駆けで、米不動産部門責任者のメグジ氏は、新婚であろうと容赦なくBREITを巡る嵐の渦中に飲み込まれた。
山々に囲まれたニュージーランド南島の湖畔リゾートで、メグジ氏は夜通し働き、ファンドへの信頼の証としてカリフォルニア大学が40億ドル(約6400億円)を出資する合意を取り付けることに尽力した。
翌朝、同氏はたまたま近くで休暇を過ごしていた、同じ不動産分野の幹部であるジョン・グレイ社長と話をした。
メグジ氏はブルームバーグとのインタビューで、「私は妻に、これは私たちの結婚生活のルールではなく、例外になると約束した」と振り返った。
同氏がその誓いを守るかどうかは、その手腕にかかっている。メグジ氏はその後、ゴールドマン・サックス・グループ出身のキャスリーン・マッカーシー氏と共に、世界最大の不動産投資家である3390億ドル規模のブラックストーンのグローバル不動産部門全体の責任者となった。不動産業界が高金利の長期化に揺れる、これ以上ないほど難しい時期の昇進だった。
BREITは最近、学生寮の売却に際して買い手に融資を提供するなど、話題を呼んでいる。しかし、ブラックストーンがその名をはせ、現在も事業の中核である巨大なオポチュニスティック(高リスク・高リターン)不動産ファンドも業界と共に、大きな試練に直面している。
低コストの資金を潤沢に持つこれらのファンドとPE投資大手は過去数十年間、世界の不動産市場を牛耳ってきたが、中央銀行がその確実性の時代を打ち壊した。