大井川鉄道の不通区間、2年ぶり走行 ホームに列車展示 地元の熱意「マルシェ」開催
2022年9月の台風15号被害以降、大井川本線の一部区間で不通が続く大井川鉄道は23日、千頭-青部(川根本町)間で、普段は運行していない井川線の車両を特別に走行させた。同区間を列車が走るのは、不通になって以降初めて。地域振興や早期全線復旧を目指し、青部駅で開催された「青部駅マルシェ」(同実行委主催)に列車を展示するための特別措置。ホーム前に列車が久々に戻り、鉄道の沿線らしい風景が一時的によみがえった。 マルシェは今年3月、本選の全線復旧に向けて活動する地元有志らによる「大井川鉄道全線復旧を支援する会」が、町と活動を協議する中で構想が持ち上がった。実行委発足後、8月から会場周辺の草刈りや駐車場の造成を実施し、準備を進めてきた。実行委の中原緑事務局長は「住民の生活や観光活性化に、鉄道は深く結びついてきた」と話す。 大鉄は同会の要請を受け、マルシェでの列車の運転を決定。乗客を乗せた運行はできないものの、同じ線路幅で電気が不通でも動くディーゼルの井川線車両による走行が実現した。2年ぶりの走行に合わせ、区間内の線路や設備は総点検した。 ホーム横に停車した列車では、制帽をかぶった記念撮影や切符切りの体験が行われ、多くの来場者でにぎわった。駅前広場では町内外から出店した飲食や雑貨など、22店舗が出店。青部駅のホームはステージとして使われ、川根高の吹奏楽部や郷土芸能部などが演奏やダンスを披露した。同町桑野山の30代女性は「子どもが電車好きで、触れられる機会が少なくなっていたのでとても喜んだ。また機関車が走るのを楽しみにしている」と話した。 同実行委は来年度以降も、他の駅でのマルシェ開催を視野に入れ、活動を続けていく。 ■大鉄の鳥塚亮社長「全線復旧に意欲」 マルシェの開会式には、6月に就任した大井川鉄道の鳥塚亮社長が出席した。あいさつでは「不通でも、地元の人が駅や鉄道へ愛着を持ち、イベントを開催してもらえるのはありがたい」と感謝を述べた。青部駅への列車走行と展示については「困難は多かったが、全線復旧に向けた意欲がある、という会社の意思をぜひ示したかった」と話した。 近況については「前経営体制時は、コロナ禍や災害が尾を引いていた。今年前半から状況が変わり、本格的に需要が見込めるようになってきた」と需要を掘り起こしていく姿勢を強調した。 一方で線路の修復工事開始から全線復旧までには、変わらず資金面や工事業者の規模などの課題がある。最低でも3年はかかるとの見解を示し、「開通区間側から部分的に復旧することも含め、少しずつやっていければ」と話した。
静岡新聞社