マラドーナの死から4年…遺族が他殺を訴えた初公判は来年の3月に予定 断ち切れなかったコカイン、マフィアとの関係
過ちを犯し、その代償を払ったが、ボールは汚れていない
だが2020年、彼の肉体は限界を迎えた。晩年は一人で歩くこともままならないほど衰弱していたという。11月3日、脳血種の除去手術。退院後の25日、心不全のため、アルゼンチンの自宅で死去。帰らぬ人になった。 90年代半ばから彼が入退院を繰り返した最大要因が、カモッラとの関係であることに疑いの余地はない。「ドラッグはいたるところにあって、ヤツらは特別なトレーに乗せて勧めてきた」と、後にマラドーナ本人も認めている。 なお、死因に関しては諸説あり、故殺(計画性のない意図的な殺人)の疑いで医療従事者8名が遺族に訴えられている。アルゼンチンの日刊紙『ラ・ナシオン』によると、2024年10月1日に予定されていた第一回公判が、2025年3月11日に延期されたという。 だれよりもドラマティック、なおかつエキセントリックな人生を、マラドーナは紡いでいった。本人の希望とはほど遠かったのか、あるいはプランに則ったものなのか、神ですらあずかり知らない展開だ。 マラドーナのパフォーマンスは19歳以下のころからすべて映像が残っている。彼がいまでも愛されているのは、紛れもなく本物の実力を兼ね備えていたからだ。 リオネル・メッシのように多くのタイトルを獲得したわけではない。クリスティアーノ・ロナウドのように自分を律していたわけではない。 情緒不安定で、わがまま放題、ドラッグ常習の非常識な人間。それでも、マラドーナはサッカーに対して真摯な姿勢で立ち向かった。 「俺は過ちを犯し、その代償を払ったが、ボールは汚れていない」という言葉も残している。 マラドーナの前にマラドーナはなく、マラドーナの後にマラドーナはない。不世出の天才は “悪の華” 独特の妖しい香りを振りまきながら、いまも多くの人々を惹き付けている。 文/粕谷秀樹 写真/shutterstock
粕谷秀樹