脱炭素電源周辺へ最先端企業、電気代補助など誘致策検討 政府GX2040ビジョン原案
政府は26日、2040年に向けた脱炭素と産業政策の戦略「GX(グリーントランスフォーメーション)2040ビジョン」の原案を示した。原発や再生可能エネルギーといった脱炭素電源の周辺地域に、人工知能(AI)やロボットなどを活用する電力多消費型の最先端企業の進出を促すのが柱。自治体による脱炭素電源の整備も後押しし、地域経済の活性化につなげる狙いだ。 ■「30年の経済停滞打破する好機」 石破茂首相は26日のGX実行会議で、「GXの取り組みは30年間の日本経済の停滞を打破する大きな好機。日本各地に新しい産業の集積が生まれる可能性がある」と強調した。原案は意見公募を経て、24年度中の閣議決定を目指す。 原案では、脱炭素電源がある地域への産業集積に向け、「製品の価格競争力強化や生産コスト低減に資する措置を検討する」と明記した。経産省幹部によると、新たな措置としては電気料金を安くしたり、補助金を出したりすることが念頭にある。税負担を軽減する可能性もある。企業誘致策の詳細は年明け以降に詰める。 また、自治体が脱炭素電源を整備する取り組みも支援する。原案では「企業の立地によって得られた成長の果実を共有する仕組みを検討する」と書き込んだ。 ■化石燃料基盤、直ちに転換は困難 世界的なIT大手などは脱炭素電源の確保を進出条件に掲げる。こうした大企業を国内の供給網に組み込むため、各国とも脱炭素電源の整備を進めており、日本も新たな産業集積の仕組みの構築を急ぐ。 原案はGX分野の産業振興策も盛り込んだ。企業の設備や人材への投資、研究開発を促すため「政府として制度改善を通じて事業環境整備を進める」と強調。国内外の学術機関と連携し新たなイノベーションの社会実装を目指すとした。 個別分野の取り組みとしては、次世代型の「ペロブスカイト太陽電池」や、温室効果ガスを出さない「ゼロエミッション船」などの導入を促す方針を掲げた。 ただ脱炭素への移行を巡っては、化石燃料を基盤とする日本の経済社会構造を直ちに転換することは困難だ。火力発電への水素の活用などを念頭に「現実解として導入できる技術」を活用して段階的に進める。同じく化石燃料に頼るアジアとの連携も視野に入れる。(中村智隆)