私はこの家にずっと尽くしてきたんだから!90歳で亡くなった〈父の遺産6,000万円〉をめぐり登場した「想定外の人物」の正体は?70歳長女「一体どうすれば…」【弁護士の助言】
遺産分割協議でトラブルを防ぐためのポイント
3. 遺産分割協議の進め方 遺産分割協議の基本 遺産分割協議は、相続人全員で遺産の具体的な分配方法を決定する場です。全員の合意があれば、法定相続分とは異なる分配も可能です。 遺産分割協議の具体的なステップ (1)相続人の範囲の確定 相続人は、美幸さん、佐和子さん、盛夫さんのこどもの合計3人です(元妻・義妹は含まれません)。 (2)遺産の範囲と評価額の合意 遺産の範囲と評価額は、預貯金3,000万円並びに一軒家及びその敷地(評価額3,000万円)です。 なお、遺産の評価額について争いが生じる場合、評価額の算出に役立つ客観的な資料を基に相続人間で話し合い、評価額を決める必要があります。 (3)分配方法の合意 分割方法としては、主に下記の4つの方法があります。どの方法で遺産分割をするか、その組み合わせも含めて相続人間で話合いが必要となります。 現物分割:現金、土地などの遺産を相続人間で物理的に分ける代償分割:遺産を取得した相続人が、ほかの相続人に代償金を払う換価分割:遺産を売却し、それで得たお金を相続人間で分ける共有分割:遺産を複数の相続人の共有名義とする遺産をどのような割合で分割するかは、相続人間の話し合いで決めることになります。もっとも、話合いでまとまらない場合には、法定相続分で分け合うことになるので、本件の場合だと、美幸さん(長女)佐和子さん(二女)及び盛夫さんのこども(代襲相続人)の法定相続分が各3分の1であるため、各2,000万円分の遺産を取得する権利があります。 たとえば、相続人らが空家となっている一軒家とその敷地の取得についてこだわりがなければ、一軒家とその敷地に関しては、換価分割することを相続人間で合意し、第三者に売却した売買代金から売却に掛かる諸経費を控除した現金を相続人らが法定相続分で取得し、預貯金に関しては、現物分割として各相続人が3つある銀行口座の預貯金をそれぞれ取得する形の現実的な分配案を考えることができます。 4. 協議がまとまらない場合 話し合いが決裂した場合、家庭裁判所での遺産分割調停を申し立てることができます。調停では、中立の調停委員が話し合いをサポートし、公平な解決を目指します。 なお、遺産の評価まで合意できたものの分割方法について合意ができない場合には、相続人それぞれの主張や提出された資料等を基に、裁判所が遺産分割の内容を決する審判により遺産分割が決まります。その際の分割割合は法定相続分が原則となります。 5. トラブルを防ぐためのポイント (1)感情的にならない 元妻(義妹)への嫌悪感や過去の確執に引きずられないようにしましょう。法律に基づいた冷静な対応が重要です。 (2)代襲相続人と直接対話する 盛夫さんのこどもと直接話し合い、公平な分配案を提案することで、余計な対立を避けることができます。 (3)専門家のサポートを活用する 弁護士等の専門家の助けを借りることで、協議がスムーズに進み、法律に基づいた解決が可能になります。
まとめ
盛夫さんのこどもは代襲相続人として相続権を持っていますが、元妻(義妹)に相続権や特別寄与料の請求権はありません。遺産分割協議を冷静に進めることで、全員が納得できる解決を目指しましょう。 不安な場合は、弁護士などの専門家に相談し、スムーズな進行をサポートしてもらうことをおすすめします。 板橋 晃平 弁護士
三浦 裕和