大統領選を左右するアメリカ「労働組合の現在地」、組織率が低下するも、その影響力は侮れない
さらに、労働組合の組織率は地域差もあり、ニューヨークやカリフォルニアなどは組織率が高いですが、南部はかなり低いので、全国的にみると影響力はそれほどではないといえます。 もちろん、特定の地域では存在感はありますが、一般企業だと組合が強い州から南部の州に事業所を移転してしまう状況があるので、影響力には限界があるのです。 ■労働組合が弱体化し労働者のコミュニティーに変化 ――2016年、労働組合がそれなりに力のあったラストベルトの地域の労働者がトランプ支持に回ってトランプが大統領になったといわれていますが、それは労働組合の組織率が下がったためなのでしょうか?
松井氏 組織率が低下しているのは確かです。そのうえで、なぜ、労働者がトランプ支持に流れているかというと、いろいろな説があります。 かつて、労働組合は、労働者の日常生活を取り巻く、ある種のコミュニティーでした。その労働組合が弱体化した結果、教会や銃所持者団体などの存在が相対的に高まって、それらが労働者を取り巻く社会的ネットワークとしてとってかわったといわれています。そして、労働者が労働組合から解き放たれることで、共和党の方へ流れていったという研究もあります。
労働組合は民主党支持が圧倒的です。労働組合員も加盟していることで政治的情報も提供されますし、労働者の権利を守るという側面では民主党が「味方」であることは間違いないので、民主党支持が多くなります。 しかし、ラストベルトの労働者全体を考えると組織化されていない人の方が多く、その人たちは共和党を支持する可能性も高いです。 ――労働組合でも共和党を支持しているところはあるのでしょうか? 松井氏 労働組合のリーダーレベルでいうと、ほぼ民主党であるといえます。組合の献金ですとか、ロビー活動や、人とのつながりでいうと圧倒的に民主党です。
しかし、組合の中に目を向けると、労働組合は政治団体ではないので、政治目的で参加した人ばかりではありません。ですから、一般的な労働組合員でみると、共和党支持、トランプ支持も一定数存在していることは確かです。 その人たちが組合に加盟したのは、民主党を支持しているからではなく、職場における利益代表という側面で加入していますし、中にはユニオンシップ(全員加盟の組合)だから強制的に加入させられている人もいます。