視察を繰り返して問題点を抽出。与えたヒント5箇条とは? 反町GMが乗り出した清水アカデミー改革の全貌(後編)
「ポストユース」という難しい課題
反町GMがピックアップしたポイントは、日本サッカー協会(JFA)の技術委員長時代にチェックした年代別世界大会でも「日本人に足りない」と感じたところだという。 日本は2023年U-17ワールドカップでベスト16敗退、同年のU-20ワールドカップではグループステージ敗退の憂き目に遭っているが、上位進出国と比べると、攻撃時の加速やコンタクトスキルなどでは確かに見劣りした印象が否めなかった。 「清水がチャレンジすることが、日本のチャレンジにつながり、ひいては年代別世界大会や五輪、ワールドカップの結果につながっていくと思っています。これまではJFAの一員という立場でレベルアップを考えていましたが、今は一クラブの人間として底上げを図っていく立場。だからこそ、あえて今回、研修会を実施して、アカデミーコーチの認識を高めたいと思ったんです。 10月には第2弾として清水、駿東、藤枝などのスクールコーチを集めた研修会を開催する予定です。アカデミーコーチにもさらなるアクションを起こしたいとも考えています。そうやって土台作りがうまくいけば、自ずと成績も上がるでしょうし、アカデミーからトップに昇格し、より高いレベルに飛躍していく選手も多くなるはず。そうなるようにできることを考えていくつもりです」 “サッカー王国・清水”の再建に強い意欲を示す反町GM。これまでも清水のアカデミーからは毎年のように年代別代表のプレーヤーが出ているが、残念ながら全てがトップに定着し、活躍しているとは言い難いものがある。 日本サッカー界には「ポストユース」という難しい課題があるが、清水の場合はその傾向が顕著だ。10代の時点で輝いていても、トップ昇格後に伸び悩むという例を減らし、タレントがグングン成長していくようになれば理想的である。 そのためにも、今回のようなピッチ内の取り組みと並行して、ピッチ外の人間教育を取り入れる必要があるのかもしれない。反町GMはそれも含めて、今後の有効な策を講じていくはずだ。 故郷に戻った百戦錬磨の男が放つ二の矢、三の矢を楽しみに待ちたいものである。 取材・文●元川悦子(フリーライター)