「尋常じゃない数のゴキブリ、クモ…」 虫が大量発生した「ゴミ屋敷」に、少女がひとりで取り残された理由
ゴミ屋敷に住む子どものことを考える際、文直氏と話していると度々こんなテーマが話題に上がる。 “ゴミ屋敷は子どもの成長に悪影響を及ぼすのか” 一般的な感覚からすれば、言うまでもなく悪影響かもしれない。ただ、現場を見ている文直氏は少し違った見方をしている。 「シングルマザーでゴミ屋敷になってしまう家庭を多く見てきましたが、そういう家庭でも子どもはちゃんとお母さんのことが大好きなんですよ。お母さんも決して育児放棄をしているわけではない。ただ、片付けられないだけで、子どもに愛情はきちんと注がれているんです」
とはいえ、「悪影響はない」とは言い切れない。イーブイが京都に住むシングルマザーの家庭から依頼を受けて片付けをしたときのことだ。 小学校に通う子どもが母親にベッタリだった。甘えるというより、依存していると言ってもよかった。その要因は、家がゴミ屋敷になっていることにあったという。 子ども同士は気にしていないものの、同級生の親が「あの家はゴミ屋敷だから」と気にしていた。それによって、子どもが学校で孤立状態に陥っていたのだ。
■小学生のまま、時が止まった娘の部屋 ただ、今回の現場に関しては「悪影響か否か」判断しかねるレベルからは逸脱している。2Kのうち1つの部屋はリビング兼父の寝室。もう1つの部屋を娘が使っていたが、「娘さんの部屋はどこか様子が変だった」と文直氏が話す。 「娘さんは17~18歳だったと思うのですが、ベッドや机、使っているモノ、身につけている服が、何もかも小学生の持つようなものだったんです。普通、成長とともに好みが変わったり、使うモノも大人っぽくなったりするじゃないですか。でも、そういうのが一切ないんです。小学生の部屋に17~18歳が暮らしているので、違和感を覚えました」
ずっとゴキブリと共存するような生活が続き、そこに“慣れ”まで生じていたのであれば、父親が娘にモノを買い与える余裕もなければ、娘自身も「自分の好み」といったものを意識する心理状態にもなれなかったのかもしれない。 現場に入ったスタッフは全部で6人。片付け開始からわずか1時間で、部屋は跡形もなく空になった。 「娘を連れて九州の実家に戻ります」(母親) 現在、母と子は大阪を後にし、九州地方で新たな生活を始めている。ゴキブリが1万匹出ようと、部屋で人が亡くなったわけでもない。おそらく大家によるリフォームを経て、何事もなかったかのように別の誰かが住んでいるはずだ。
【写真】「天井からゴキブリやクモが落ちてくる…」少女が1人きりで暮らしていた“過酷すぎるゴミ屋敷”(21枚)
國友 公司 :ルポライター