「尋常じゃない数のゴキブリ、クモ…」 虫が大量発生した「ゴミ屋敷」に、少女がひとりで取り残された理由
作業する前にバルサンを焚いたんですけど、ゴキブリって弱ると上に登っていく習性があるんです。なので、作業中は、天井で力尽きたゴキブリが肩にボトボトと落ちてきました」 ■ゴキブリを捕食するクモも大量発生 しかし、今回の現場は、その団地の一室をはるかに上回った。 キッチンに置かれた大型冷蔵庫を持ち上げると、現場にいたスタッフたちは凍りついた。床は冷蔵庫の形に四角く真っ黒になっていた。まるでコーヒーの粉を丸ごとこぼしてしまったかのようだ。だが、それはすべてゴキブリの子どもと卵だったのだ。
前出の団地の現場が千匹だとすれば、「あれは1万匹の世界だった」と文直氏は言う。 片付けの最中、ゴキブリを捕食することで知られる「アシダカグモ」がゴミの上を頻繁に行き来していた。本来、このアシダカグモはゴキブリを駆逐してくれる存在なので見つけてもそのままにしておく人も多い。しかし、ゴキブリの量があまりにも多すぎて、クモにとっても圧倒的に供給過多だった。 そんな状態ではゴキブリが減るばかりか、ただただクモの量も増えていくばかりだった。
この家に住んでいた10代後半の少女は、長らく父親と2人で暮らしていた。両親は早くに離婚。親権は父親に渡り、母親は実家のある九州地方に移った。 父親は現役で働いていたものの、病に倒れ入院。その間は近くに住んでいる親戚が少女の生活をフォローしていたが、部屋の状況までうかがい知ることはなかったのだろう。 入院してから約1カ月後、父親は他界。通夜なり、葬式なりを済ませ、母親が8年ぶりに元夫と暮らした部屋を訪れてみると、服にゴキブリが付いたままの娘が中から出てきた。家中を虫が飛び回り、想像を絶するような酷い状態だった。
母親はバルサンを何度も焚き、1人でゴキブリの駆除をしていたが、とてもじゃないがやりきれない。家具やゴミの処分もあるし、家賃の支払いも続いている。そうして、イーブイに片付けの依頼をしたというのがことの顛末だ。 ■「ゴミ屋敷」は子どもにとって悪影響なのか 娘が1人で住んでいた1カ月足らずでは、どんな生活をしていてもここまでゴキブリが湧くようなことは考えられない。死人に口なしだが、原因はほぼ間違いなく亡くなった父親にあった。