京大が侍ジャパン左腕・金丸夢斗の連勝止めた 元ソフトバンク左腕監督はどう見たか「選手にはホント失礼なんですけど…」
4人の継投で守り抜き「これしかない勝ち方」
◆関西学生野球春季リーグ・京大1―0関大(6日、わかさスタジアム京都) 元ソフトバンク投手の近田怜王監督(33)が率いる京大が、関西学生リーグの開幕戦に登場。3月の欧州代表戦で侍ジャパンにも選出された関大の左腕・金丸夢斗(21)の関西学生リーグでの連勝記録を「18」で止める大金星を挙げた。 ■山本由伸現る!? 九州王者エースが〝完コピ〟フォーム【動画】 7回に挙げた1点を4人の継投で守り抜き「これしかない、という勝ち方」と近田監督。今秋のドラフト会議で競合必至の1位候補でもある剛腕を見事に打ち破った。 「選手にはホントに失礼なんですけど、8割、9割は、負けることを想定していました」
5回まではノーヒットに抑え込まれ…
近田監督が正直な心中を明かしてくれたのは、試合後のことだった。最速153キロ左腕は、リーグ戦通算19勝2敗。3年終了時で18連勝中と、同じ関大の先輩で、リーグ最多の46勝をマークしている元阪急・山口高志氏(現・関大アドバイザリースタッフ)のリーグ連勝記録「21」にも迫り、侍ジャパンのメンバーとして臨んだ今年3月の欧州選抜戦でも、第2戦に先発して2回を4奪三振。大学球界ではもはやケタ違いの実力で、この日のネット裏も、ソフトバンクは永井編成育成本部長兼スカウト部部長、福山アマスカウトチーフの〝スカウト2トップ〟が視察し「これから何回も見に来ますよ」と永井部長が徹底マークを宣言したほどの逸材だ。 近田監督は「金丸君のチェンジアップとか、抜かれるボールはまず打てない」と語り「2点取られたら諦めて、ピッチャーを2戦目に温存して、2戦目を取る。そうすると、3戦目にもう一度、金丸君が出てくるだろうから、その時のためにこの試合で、できるだけ粘って、球数を投げさせておく。そこは正直、考えていました」。案の定?5回まではノーヒットに抑え込まれ、攻略の突破口も見いだせそうにない雰囲気すら漂っていた。
「金丸はレベルが上過ぎて…」
ベンチスタートだった西村主将は、昨季のリーグ戦で金丸と対戦経験があるが「あまり変わっていないというか…。すご過ぎて、レベルが上過ぎて、どう変化したのか分からないくらいです」と笑う。試合前の分析データと、試合で対戦した打者陣からの申し送りを、西村主将を中心にベンチ内で照らし合わせ「真っすぐだけ。金丸君にバレてもいいから、真っすぐを張って、真っすぐだけ捉えようというところでした」と近田監督。7回2死無走者から3番谷口(3年)が遊撃内野安打を放ち、相手の失策も絡んで二進。ここで4番中村(4年)が右前へ決勝タイムリー。直前の2打席はいずれも空振り三振に終わっていた中村の一打に「振り遅れもありましたけど、序盤に振っていったことで、あそこはしっかりと結果を出せたんじゃないかと思います」と近田監督。この虎の子の1点を、4人の継投で守り抜いた。 先発の米倉(3年)は1回に最速の135キロを出した以外は、ストレートは大半が120キロ台。のらりくらりと交わす巧みな投球で、6回まで関大に三塁を踏ませず「あれが唯一の予想外」と西村主将は笑いながら後輩の快投をたたえると、1点リードの9回に登板した西宇(4年)も最速は131キロ止まり。「彼はスピードが速くないのに力んでしまうところがあった。だから『この春は責任のあるところを放らせないから、脱力して打たれてもしゃあないと、力を抜いて練習しなさい』と言ってきたんですが、それを体現してくれましたね」と近田監督は振り返る。プレッシャーのかかる場面でも、西宇は100キロ台の緩いカーブを多投し、2死一、三塁のピンチを招きながらもしのぎ「どこかで1点取って逃げるしかない。この戦い方しかなかった」と近田監督が語る完封リレーで逃げ切り、侍ジャパン左腕を下す大金星を挙げた。 近田監督は、兵庫・報徳学園のエース左腕として甲子園に3度出場し、2009年ドラフト3位でソフトバンクに入団。4年間で1軍出場のないまま戦力外となったが、社会人のJR西日本に入社してプレー。15年12月からは社業に専念し、車掌も務めていた。仕事の傍らで、京大をボランティアで指導し、21年11月に監督就任。22年春のリーグ戦では3年ぶりの最下位脱出を果たし、同秋のドラフトでは京大医学部出身で、昨春のキャンプ中に理学療法士の国家試験にも合格した右腕・水口創太が育成7位でソフトバンクに指名されている。チームの強化ぶりはもちろん、その育成手腕にも注目が集まる〝鷹OB監督〟が、いきなり注目の剛腕を倒し、またもやその名を上げた。
西日本新聞社