「ケンタッキーの味落ちる?」米ファンド買収で広がる「ウワサ」、実は“大ウソ”と断言する理由
突然の買収発表、チキンはどうなる?
日本KFCに対し、アメリカの投資ファンド、カーライル・グループが買収を発表したのである。日本KFCの筆頭株主である三菱商事から株式の取得を進めるほか、TOB(株式公開買い付け)による取得を実施。9月をめどに完全子会社化を進めている。 この報道に対し、すぐさまSNS上ではこんな「噂」が広がった。 「日本のケンタッキーの味が落ちるのではないか?」 この噂がたった原因は、鶏肉の調達先が上述したジャパンファームから他社に変更されるのではないか、という疑念だ。 というのもジャパンファームは、筆頭株主である三菱商事を中心に、飼料メーカーの日本農産工業・日清製粉、さらに食品メーカーの日本ハムの4社で設立された企業。そのため、KFCから三菱商事が離れることで、ジャパンファームとの関係も解消するのでは、という憶測が広がったと考えられる。 では、この噂は本当なのか――。フードビジネスコンサルタントとして多数の著書があり、YouTubeチャンネル「永田ラッパ~食事を楽しく幸せに~」を運営する永田雅乙氏は、「味が落ちることは、ほぼゼロでしょう」とバッサリ切り捨てる。
カーライルは経営に口を挟まない
「おそらく買収したのが“米国投資ファンド”ということで、ハゲタカファンドのような悪い印象を持たれた消費者が多く、こうした噂が出たのかと思います。雑巾を絞るがごとく『コストカット』で剛腕を振るうようなファンドが日本KFCを買収した場合、より安価な鶏肉の調達先に変更する可能性も無くはないです。 しかし、今回のカーライルは、日本KFCの『バリューアップ(利益を上げる)』、つまり既存の価値をより高いものにする戦略をとると考えられます。したがって、高い品質を誇るジャパンファームをみすみす手放すことは想像できません」 永田氏はあくまで今回の買収は“ポジティブ”なものと受け入れているという。その根拠となるのが、かつてカーライルがMBO(経営陣が参加する買収)を行った居酒屋チェーン「はなの舞」「さかなや道場」などを運営するチムニーのケースだ。 「チムニーは度重なる業績不振で一度は上場廃止に追い込まれました。しかし2009年、カーライルの支援を受ける形でMBOを実施したところ、企業価値が十分に向上したとして2012年に再上場を果たしています。 私は当時のチムニー幹部と話したことがありますが、『カーライル側は自分たちのやり方を強制することはなく、経営に口を挟むこともなかった』と、MBOについて非常に肯定的だったことが印象的でした。 カーライルの目的は、あくまで日本KFCの価値を高めて、買収額の何倍もの額で他社に売却し、利益を得ること。したがってチムニーの時と同様、ポジティブなものとなるはずです」 では具体的にカーライルは日本KFCにどんな経営改革を実行していくのか。