ファミリーの夢の結実。繊細で美しきニュージーランドワイン「クラギ―・レンジ」
今でこそ、ホークス・ベイは高品質のカベルネ・ソーヴィニヨンやシラー、シャルドネなどで有名で、マーティンボロは繊細でエレガントなピノ・ノワールやピュアな印象のソーヴィニヨン・ブランで知られるが、ワイナリーが設立された当時は未開の地も多かった。「クラギ―・レンジ」では「何よりも大切なのはブドウ」と、一本一本ブドウの木を植えるところから始めたという。そして今では、天空まで届くかのような雄々しい岩山に囲まれたブドウ畑は青々と美しく、その壮大な景色に圧倒される。 現在、ワイナリーが注力しているのは自然との共生で、サステイナブルでの栽培を実践、畑の微生物などを調べて土地を理解し、生物生態系を実現させている。ブドウ栽培はオーガニックを実践中で、将来的にはホークス・ベイとマーティンボロのすべての畑をオーガニックに転換する予定だ。 また、栽培の上で興味深いのが、ブドウのクローン(樹の枝を接ぎ木するなどして作られたブドウの樹)へのこだわりだ。ブドウはクローンの違いによって味も違うため、多種のクローンを畝ごとに植えている。たとえば、マーティンボロのテ・ムナ・ロード ヴィンヤードでは、ピノ・ノワールだけで30種のクローンを植え、それを畝ごと、あるいは区画ごとに収穫、75のタンクで細かく発酵させているという。 「こうするとことでテロワールとクローンとの相性が明確にわかり、この地に合ったクローンがセレクトできるのです。土地の個性を生かすためには、クローンの選抜も重要。テロワールの魅力が感じられるワインを造りたいと思っています」とピーボディ Jr.氏。 【写真】南島ワイララバ地方マーティンボロにあるテ・ムナ・ムード・ヴィンヤード。冷涼な海洋性気候で、昼夜の寒暖差があり、凝縮感のあるブドウが育つ。ここには、40mの標高差がある畑があり、上部の堆積岩や火山灰が含まれた土壌ではピノ・ノワールを、下部の小石が混じった石灰石土壌ではソーヴィニヨン・ブランを栽培している 「クラギ―・レンジ」のワインは、洗練されたエレガントな味が特徴的だが、それもこの緻密な栽培とていねいな造りがあってのもの。だが、なにより大きな魅力は、グラスを手にする人にどこか肩の力が抜けていくようなリラックス感を与えてくれることだろう。優雅さと透明感を持ちあわせたワインは、週末、ほっとひと息つきたい時間にこそふさわしい。 問い合せ先 WINE TO STYLE TEL:03-5413-8831 BY KIMIKO ANZAI