ゲームやるなら「ゲーミングスマホ」選ぶべき?答えはYESだ!3機種で検証してみた
スマートフォンのゲームといえば一昔前はリズムゲーム、それより前はパズルゲームが主流だった。ゲーム性の高いタイトルを遊ぶとなると別途携帯ゲーム機を持ち歩いたり、グラフィックスなど演出を重視したタイトルを遊ぶとなると、据え置き型のゲームコンソールを使うか、ビデオカードなどにそれなりにコストを掛けたPCで遊ぶ必要があった。 【この記事に関する別の画像を見る】 だが、最近はスマートフォンでも「PC同等」、「ゲームコンソール同等」といってもいいくらいにグラフィックスに力の入ったゲームタイトルも多く、またそれが1つの流行りであり、スマートフォン選びの基準としている人も珍しくない。 実際、数年前にはニッチジャンルだった「ゲーミングスマートフォン」、「eスポーツ」も今や「eスポーツ大会に選ばれたゲーム性の高いタイトルを、ゲーミングスマートフォンでプレイする」など、スマートフォンとゲームの関係は切っても切り離せないほど密接なものになっている。 ただ、こうしたゲームタイトルを本気で遊ぶにあたって「ゲーミングスマートフォンを選ばないといけないのか」は、実は意外と分かりにくい。 メーカー各社から発売されるフラグシップのスマートフォンの性能はゲーミングスマートフォンとスペック上はほぼ同じだ。 ゲーミングスマートフォンの多くに共通する「いかにも」な見た目を忌避したり、防水やおサイフケータイなどの付帯機能までも重視した場合にはどうしてもゲーミングスマートフォン以外を選んでしまうだろう。 そこで今回はフラグシップのスマートフォンとゲーミングスマートフォンを用意し、いくつかのベンチマークソフトの実行結果と、実際のゲームプレイ時のフレームレートなどを比較し、ゲームを遊ぶという一点において優位性の有無を確認していく。 ■ 比較するスマートフォンたち 今回、このテストのために用意したスマートフォンは以下の3台だ。 ・REDMAGIC REDMAGIC 9S Pro ・サムスン Galaxy S24 Ultra(SCG26) ・Google Google Pixel 9 Pro どのモデルも今年発売されたモデルであり、価格も10万円~20万円台とイマドキのフラグシップモデル、高性能モデルらしい価格設定となっている。 以下にスペックの詳細をまとめているが、たとえばメインメモリ(RAM)も12GBや16GB、120Hz以上のハイリフレッシュレートのディスプレイを搭載するなど、数字で見る限りはどれも「高性能」だということが分かりやすいスペックの機種ばかりだ。 ■ 定番ベンチマークアプリで性能を測ってみる まずはスマートフォン向けの定番ベンチマークアプリを実行し、スマートフォン毎の性能差の確認を行なった。 計測に利用したベンチマークアプリは「GeekBench 6」、「AnTuTu Benchmark」、「3DMark」だ。 GeekBench 6ではCPUだけでなくGPUのベンチマークも実行している。3DMarkは「Wild Life Stress Test」を実行し、連続して20週も実行されるテストにおいて記録された最小・最大スコアの双方をグラフに掲載している。 計測は室温25℃の室内で机の上に計測するスマートフォンを1台ずつ置いた上でベンチマークアプリを実行している。 またベンチマークアプリの実行後は連続して次のベンチマークアプリを実行することなく、一度端末温度をアイドル状態に温度が下がった状態で次のテストを実行している。 結果については以下にグラフの通りだが、同じ「Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3」を搭載するREDMAGIC 9S ProとGalaxy S24 Ultraのスコアは最大値でいえばかなり近い値となっている。 だが、3DMarkのテスト結果に注目すると「最大値こそ近しいスコアが出ているが、最小値では倍近いスコア差が出ている」点は見逃せない。 スマートフォンも高性能化に伴い「冷却」が課題になっている。高温状態が続けばパフォーマンス低下は免れないことから、従来よりも大型のヒートシンクの採用や本体フレームを利用しての排熱、また熱された液体が気化することで効率よく排熱を行なう「ベイパーチャンバー」の採用など、各メーカー・各モデルにおいては冷却機構にどのような工夫を設けたかを新製品発表の場で大きくアピールすることも珍しくない。 今回比較した3機種でいえばREDMAGIC 9S Proは大型ヒートシンクにベイパーチャンバー、さらに冷却ファンも搭載するなど、どの機種よりも冷却に力を入れている。 3DMarkのテスト結果が示す通り、最大値こそ近しいスコアを出せたとしても、長時間の高負荷状態では「いかにスマートフォンを冷却できるか」で、パフォーマンスを維持できる時間が大きく変わってくることを如実に数字として表わしたと言っていいだろう。 ■ 実際のゲームプレイでの差は? ベンチマークアプリの結果だけでなく、実際のゲームをプレイしてのパフォーマンスの差についてもチェックしていこう。 今回はスマートフォンの販売現場でも「快適に遊べますか」と聞かれる機会が多いらしい、miHoYo/HoYoverseの「原神」、「崩壊:スターレイル」、「ゼンレスゾーンゼロ」の3タイトルを実際にプレイし「Scene 8」を利用し記録した平均fpsを結果として比較していく。 計測条件だが、各ゲーム設定から画質はプリセットの中から「高」または「最高」を選択し、フレームレートの上限は最大となる「60」に設定を行なった。 「原神」はスメール砂漠を約10分散策し、エンカウントした敵との戦闘を、「崩壊:スターレイル」はヤリーロ-VIを端から端まで移動した後、歴戦余韻から「不死の神実|幻朧」との戦闘を、そして「ゼンレスゾーンゼロ」は最序盤となるが「[作戦] 配送トラブル]を連続して約10分、繰り返しプレイして計測を実施した。 なお、この比較はGoogle Pixel 9 Proでは行なっていない。というのもフレームレートの計測/記録に使う「Scene 8」がGoogle Pixel 9 Proでは動作せず、同様のことが行なえる「TakoStatus」でも動作しなかったため確認のしようがなかったのだ。 ただベンチマークアプリの結果の通り、特にGPU利用を行なうテスト結果では他2機種に大きな差をつけられているため、もし計測/記録アプリが利用できたとしてもあまりいい結果は残せなかったと予想している。体感での感想となり申し訳ないのだが、実際にGoogle Pixel 9 Proで遊ぶと動作はほか2機種に比べもたつき、引っかかりを感じ快適に遊べるとはお世辞にも言えない状況だったことをここに書き残しておく。 計測結果は以下の通りだ。 概ねベンチマークアプリの利用時の結果を踏襲し、REDMAGIC 9S ProがGalaxy S24 Ultraよりも平均fpsが高い結果になった。 とはいえ極端にGalaxy S24 Ultraの結果が劣るというわけではない。ただ実際にプレイしているとGalaxy S24 Ultraの方が熱の影響なのか、特に計測終了が近づくにつれ動作が緩慢に感じられるシーンがあったことも付け加えておく。 ■ 重いゲームを遊ぶならゲーミングスマホを選ぶ優位点はまだある。冷却にも注目だ。 今回のテスト結果を通じ、スペック上は差のない「通常のスマートフォンのフラグシップモデル」と「ゲーミングスマートフォン」との差だが、これは冷却性能の差が結果につながったといっていいだろう。 もちろんGalaxy S24 Ultraも普通のスマートフォンとしてはかなり冷却性能は高い機種であり、今回のテストに登場していないほかメーカーのフラグシップモデルでも、従来モデルと比べ冷却性能に力を入れたモデルは多い。 また、ゲーミングスマートフォンに限らず純正オプションやサードパーティから空冷ファンなど冷却アイテムが用意されている機種も珍しくないため、これらを組み合わせた場合にはもしかするとゲーミングスマートフォンよりも快適にスマートフォン向けの美麗なグラフィックスが売りのゲームタイトルを遊ぶこともできるかもしれない。 とはいえ、分かりやすい「冷えそうな仕組み」が多数ゲーミングスマートフォンに備わっていることは変わりなく、今回でいえばREDMAGIC 9S Proは空冷ファンを内蔵するなど「冷えそう」と思える機構の多くが、しっかり冷やしパフォーマンスを発揮、維持できた要因であることは間違いない。 最近はスマートフォン向けにも、それこそゲームコンソールやゲーミングPCの話題作と同じような大作ゲームが毎年リリースされている。 スマートフォンを単なるコミュニケーションツールではなく、ゲーム機として活用する道を含め選ぶのであれば、ゲーミングスマートフォンを選ぶことも今後は有力な選択肢の1つとして考えてもいいのではないだろうか。 また、繰り返しになるが「冷却性能」はパンフレットやメーカーサイトでもスポットを当てて紹介されていることも多いため、機種選びの際にはぜひ注目してみるといいだろう。
PC Watch,迎 悟