中国の言う「台湾は中国」は本当か......世界が中国に警告を発し始めた
<中国は台湾を自国のものだと主張し、いつでも併合する権利があると言う。しかし1952年のサンフランシスコ平和条約も、共産党政権を「中国」と承認した1972年の国連アルバニア決議も、台湾の帰属について言及していない>
中国政府は、台湾を自国のものだと主張し、いつでも併合する権利があると言い続けている。この主張が言葉だけにとどまる限り、世界はさほど問題にしないが、中国政府が台湾に軍事的脅威を及ぼせば、国際社会はそれ相応の強い姿勢で臨む。 【動画】海自の護衛艦「かが」に垂直着艦するSTOVL機のF35B 最近も中国が醜悪な挑発行為を繰り返しているのに対し、アメリカやその同盟国が相次いで自国の軍艦に台湾海峡を通航させている。しかし、世界の国々が取っている措置はそれだけではない。 10月24日、欧州議会は、オーストラリアなどに続き、中国が台湾の領有権を主張することに異を唱える決議を圧倒的多数の賛成で採択した。この決議では、中国政府が1971年の国連総会決議2758(アルバニア決議)を意図的に誤読し、台湾が中国に属するという誤った認識を拡散させていると非難した。 アルバニア決議は、国連が共産党政権を「中国」として承認し、「蒋介石の代表」を追放することを決定したが、「台湾」や「中華民国」には言及していない。この点は、第2次大戦を正式に終結させた1952年のサンフランシスコ平和条約に準拠したものと見なせる。 この条約は、日本が台湾を放棄するとしたが、どの国もしくは政権がそれを引き継ぐのかは意図的に明記されなかった。調印した国々の間では、蒋介石の中華民国による施政下に入りつつ、領有権の帰属は確定させず、いずれ住民が平和的に決めるのを待つというコンセンサスがあった。蒋介石も共産党の毛沢東もこの扱いには不満だったが、当時の国内・国際政治の状況により、強く拒絶することはできなかった。 ■「意図的な未確定状態」が米政府版「一つの中国」政策の核 こうしたいわば「意図的な未確定状態」は、アメリカ政府版の「一つの中国」政策(中国に台湾は含まない)の核を成してきた。日本でその曖昧さは一般大衆に広く理解されていないが、政治指導者や現代中国の研究者にはよく知られ、受け入れられている。野田佳彦首相(当時)は2012年、「(1952年のサンフランシスコ)平和条約第2条に従い、台湾に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄しており、台湾の領土的な位置付けに関して独自の認定を行う立場にない」と日本の立場を繰り返した。 サンフランシスコ平和条約とアルバニア決議が台湾の領有権について結論を下すのを避けたことは賢明だった。この方針は、これまで70年にわたり、台湾が中国の専制体制の手に落ちることを防ぐ上で大きな役割を果たしてきた。 しかし、いま中国は途方もない力を持つようになっていて、しかも台湾を併合したいという意欲を隠そうとしない。こうした点を考えると、台湾の民主体制が中国に押しつぶされる危険はないのか。 確かに、その危険はあるが、そうした危うい状態から抜け出せる日は遠くない。 さまざまなデータを見ると、中国の「奇跡の経済成長」は既に終わった。政府統計でも、若者の失業率は20%に迫っている。社会は以前より貧しくなり、暴力沙汰が起きやすくなった。人口も減少し始め、社会の高齢化も急速に進んでいる。中国の経済成長を支えてきた欧米諸国は、中国のデカップリング(切り離し)に転じつつある。 要するに、超大国・中国は──そもそも二流の超大国にすぎなかったのだが──既に盛りを過ぎ、あとは落ちるだけなのだ。 ■あと5~10年持ちこたえれば、台湾は生き残れる それとは対照的に、台湾の社会と経済は強靭だ。しかも、台湾は半導体の製造で世界の先頭を走り、グローバルなテクノロジー産業のサプライチェーンで欠かせない存在となっている。世界の民主主義国は、中国と台湾の落差を明確に認識し、台湾への攻撃を控えさせるべく中国に警告を発しようという、強い政治的意思を示している。 台湾にとって今後5~10年は、言ってみれば夜明け前の最も暗い時間だ。友好国の助けを得て、この期間を持ちこたえられれば、あとは全てうまくいく。10年もたてば、中国は今のロシアより劣った三流国に落ちぶれているからだ。
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)