前人未踏のプレミア4連覇。福西崇史が語る今季のマンチェスター・シティの強さ「個人的にはMVPはフォーデンだと思います」
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 第96回のテーマは2023-2024シーズンのプレミアリーグの総括。マンチェスター・シティが前人未到の4連覇で終幕した。アーセナル、リバプールと壮絶なタイトル争いとなった今季のプレミアリーグを福西崇史が振り返る。 * * * 2023-2024シーズンのプレミアリーグも終わり、マンチェスター・シティが前人未到の4連覇を達成して幕を閉じました。アーセナル、リバプールと最後までどう転ぶかわからない熾烈なタイトルレースを演じたなかで、シティの強さは際立っていました。 シーズン序盤に怪我によってケビン・デ・ブライネの長期離脱という大きなアクシデントがありながら、シティが力を失うことはありませんでした。誰が出ても遜色なく、チーム力を落とすことなく戦い抜き、むしろ戦力の底上げに繋がったと思います。 その分厚い選手層によって、終盤の過密日程でも高水準の戦いを維持し、ライバルたちが躓(つまず)くなかでシティだけは勝ち続けました。第15節のアストン・ヴィラ戦の負け以降、23試合で19勝4分という安定感はさすがとしか言いようがありません。 圧倒的な強さを見せたなかで、とくにインパクトを与えたのはフィル・フォーデンの活躍だと思います。最終節でも2得点を決めましたが、シーズン19得点というストライカー並の数字を残しました。 もともとウイングに入った時にドリブルによる局面の打開力は抜群で、インサイドに入っても周りとの関係性のなかでリズム良くパスを出しながら相手の守備を崩すことができる。その精度と判断力が今季はより洗練され、それに加えてゴールを狙いにいく意欲、決定力が大幅に向上し、手がつけられない選手に成長したと思います。 今季何度も見せたカットインから左足のミドルシュートの正確性、インパクトのうまさは凄まじいものがあり、彼のハイパフォーマンスは終盤の9連勝の原動力になっていました。個人的には今季のMVPはフォーデンだと思います。 フォーデンの次にMVP候補に挙げたいのはロドリです。今季も彼のパフォーマンスの安定感は抜群で、シティというタレント集団においても彼がいるのといないので違うチームになってしまうほど影響力がありました。シティは今季3敗を喫したわけですが、どれもロドリが不在のときの試合でした。それは偶然ではないと思います。 彼はあらゆる場面でチームを繋ぐスペシャリストだと思っています。ビルドアップで彼を経由して後方から中盤、中盤から前線を繋いでいくのはもちろん、守備においても自身が止めるだけではなく、自分が追い込んで他の選手が奪ったりと、ロドリの働きによって攻守にチームがうまく回っていきます。 ロドリが不在のときのシティも決して弱いわけではないですが、どこかでノッキングを起こしたり、横パスが増えて縦へのスイッチがなかなか入らなかったりと、チームがうまく回っていない影響をどこかで感じてしまいます。以前からそうでしたが、今季もあれだけの選手がいながら代えの利かない存在感がありました。