米国で急増するウェブアクセシビリティ訴訟 グローバル展開するなら、知っておきたい海外情報
アクセシビリティ関連の提訴の傾向
Seyfarthのレポートによると、2015年時点では米国でアクセシビリティの問題が理由で起きた訴訟はたった57件でした。2017年にスーパーのウェブサイトのアクセシビリティ関連の訴訟がADA違反だと認められたことを契機※1に、それ以降は件数が急増しました。 UsableNetの報告によると2018年には2,314件、コロナ禍の2021年には4,011件、そして去年の2023年には4,605件と、提訴の件数は増加傾向にあります。
米国で最も多くの訴訟を受けている業界はEコマースで、全体の84%を占めています。その次には食品サービス、教育など、幅広い業種・業態で起きています。
これらの傾向は、特にコロナの影響によって加速したとも考えられています。読者の皆さんも2020年からネット注文、ウェブ会議、オンラインレッスンなどの機会が増えていませんか。 対面でのやり取りがウェブサイトやアプリ、電話に代わるにつれ、アクセシブルでないプラットフォームやサービスは重大なバリアを作り出している現実が明らかになってきました。これによって、デジタルアクセシビリティは基本的な人権である、という意識も高まってきています。 ※1
日本の人気アパレルブランド。米国で訴状が提出される
実際、2017年には日本の大手アパレルブランドのECサイトがアクセシビリティ未対応のために米国で訴状が提出されています※2。 原告となったのはニューヨーク州在住の視覚障害者の方です。スクリーンリーダーを利用してアパレルブランドのECサイトにアクセスしたところ、さまざまな問題が発生し商品購入ができなかったという理由で、サイトがADAに違反していると主張しました。 問題点として挙げられていたのは次のような点でした。 ・画像などの非テキスト要素に代替テキスト(alt)が提供されていなかった スクリーンリーダーを使う視覚障害者ユーザーは、画像要素が見えないため、その画像が何を示しているのか代替テキストで説明する必要があります。キャンペーン情報を入手できず、営業時間や店舗情報にもアクセスできないといった状態でした。 ・リンクに遷移先を示すラベル情報がない スクリーンリーダーでリンクを読み上げる場合、リンクテキストを読み上げてからリンク先のタイトルを読み上げます。リンクテキストが記載されていないと、どのページへナビゲートされるかわからない、クリックしたリンクが正しいのかわからないという問題が発生します。 また、同じURLアドレスに移動する冗長リンクがあり、スクリーンリーダーユーザーにとっては利便性も大きく損なわれていました(冗長リンクとは、たとえば、製品画像と製品名が並んで表示されており、両方に同じ製品ページのURLがリンクされている状態などを示し、スクリーンリーダー利用者のユーザー体験を損なってしまうものです)。 こういった問題を極力減らすためには、WCAGというガイドラインを理解しておく必要があります。 ※2