ファンが映画会社を訴訟「詐欺予告」はなぜ起こる!? 有村昆が解説
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』も
まぁ、ちょっと冗談半分というか、ガチな訴訟ではないような気もしますけど、映画ファンにとってはなんとなく心当たりのあるような話ですよね。 この『イエスタデイ』の場合は、予告編が先に完成してからも本編の編集が進められ、最終的にアナ・デ・アルマスの出演シーンがすべてカットになってしまったというパターン。これはわりとよくある話で、出演者に限らず、衣装や小道具とか音楽なども含めれば、予告編にあって本編にないという作品は無数にあります。 例えば、2015年版の『ファンタスティック・フォー』の予告編。この作品は製作終盤で監督とプロデューサーの仲が悪くなり、大規模な再撮影を行ったせいで予告編に使われているシーンが本編にほとんど出てこないという事態になってしまいました。 こうした大規模なフランチャイズ作品は、宣伝活動が先行しがちなうえ、クオリティアップのために何度もテスト試写を行い、公開直前まで編集作業をすることが多いので、結果的に「詐欺」が起きてしまうわけです。 『スパイダーマン:ホームカミング』では、予告編の最後にアイアンマンとスパイディが一緒に飛んでいるシーンがあるんですけど、これが本編には出てこない。なぜカットされたのかはわからないですけど、これ以上ないキラーショットですから、どうしても予告編に入れたかったんでしょうね。 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』も、長い制作期間中にシナリオもどんどん変わってしまったので、予告編にしか出てこないシーンがたくさんある。この場合は、マニアが「実はこうだったのでは?」と考察するタネになるので、プラスの効果があったといえます。 逆に、予告編で見どころをぜんぶ出しちゃって、本編を見たら予告編以上のシーンが何もないというパターンもありますよね。 『ミッション・インポッシブル デッドレコニング』のバイク・ジャンプのシーンなんて予告で何度も観たので、いざ本編に出てきてもインパクトが薄くなってしまった。 また、映画のオチとかネタバレを避けるために、あえて未公開シーンを使ったり、登場人物を制限して観客の予想を裏切るというか、ミスリードを誘うような予告編もあります。 あとは情報を徹底的に隠すタイプ。最近の『THE FIRST SLAM DUNK』も、予告ではどういうストーリーなのかほとんどわからない。さらに『君たちはどう生きるか』なんて、公開前に予告編を作らなかったくらいですから。SNS時代の情報統制という意味でも、こうしたあえて何も語らない予告編というのは増えていくかもしれません。 情報を意図的に隠して、異なったイメージを観客に想起させるというパターンでいうと、ピクサーの『ベイマックス』が代表的ですね。 予告編を観ると、ふわふわで優しそうなベイマックスと少年の友情ストーリーみたいな雰囲気なんですけど、本編を見ると6人組のヒーローが活躍するロボットアクションなんですよね。