ファンが映画会社を訴訟「詐欺予告」はなぜ起こる!? 有村昆が解説
「詐欺予告」という言葉をご存知だろうか? 映画の予告編に入っているシーンが、実際の映画本編には一切でてこない、と一部で問題になっている現象のこと。なぜ、劇場で「詐欺予告」が流されてしまうのか? 映画評論家の有村昆が解説する。 映画が様々なメディアで気軽に観られるようになったいまでも、「予告編」を観るとワクワクしますよね。劇場公開前の新作の予告編はもちろん、何度も観たことがある映画でも、予告編を改めて見直すと面白い。映画本編とは違った方向の演出やテクニックが詰まっていて奥が深いし、「予告編」として独立した芸術作品といえると思います。 そこで、映画ファンの間でたびたび語られるのが「詐欺予告」。予告で出てきたシーンが、実際に映画館で観た本編に出てこなかったりするヤツです。 少し前に、映画の予告編に出ていた女優が本編に登場しなかったのは「虚偽広告」であるとして、ファンが映画会社を訴えたという裁判が話題になりました。 その作品は、2019年に公開されたダニー・ボイル監督の『イエスタデイ』。ビートルズの存在が消えてしまった世界で、ただひとりビートルズのことを覚えている売れないシンガーソングライターが巻き起こす騒動を描いたコメディ作品です。 この映画の予告編に、後に『007/ノータイム・トゥ・ダイ』などにも出演する女優のアナ・デ・アルマスが登場します。しかし、本編では彼女の出演シーンがすべてカットされてしまいました。 この予告編に出てくるアナ・デ・アルマス目当てで『イエスタディ』をアマゾンプライムでレンタルしたというファン2人組が、製作・配給元のユニバーサルピクチャーズを「詐欺だ!」と訴えたわけです。 ユニバーサルは、1993年に公開された同社の作品『ジュラシック・パーク』の予告編にも本編にはない映像が含まれていたことを引き合いに出して、このようなケースはいままでもあったとして反論していたんですが、カリフォルニア連邦裁判所は「人を欺くような予告編は公開するべきではない」と、原告側の訴えを認める判決を下しました。 しかし、この原告のファンが、別の動画サービスで2度目のレンタル視聴を行っていたことなどが判明し、この判決はいったん取り消されました。その後、両者は和解案を受け入れて裁判は集結しましたが、その和解条件については公表されておりません。