1999年以降、アメリカで熱中症による死者が2倍超に。日本でも急増
熱中症による救急搬送も増加傾向
データの収集時期などにばらつきがあるため、2010年の数値が低く出ていたりもしますが、夏に熱中症で救急搬送される人も増加傾向にあります。 救急搬送数は、最も暑い夏になった昨年、9万1467人(5月~9月)に達しました。今年は、8月までに速報値で8万5000人を超えており、過去最多レベルまで増えそうです。 温暖化と猛暑の関連性についてほとんど報道されませんでしたが、気象庁の異常気象分析検討会の中村尚会長(東京大教授)は記者会見で 今年も異常気象と言って差し支えない。長期的な地球温暖化で日本の気温は底上げされており、日本近海の海面水温が高い状態は解消されにくいため、これまでにない高温が起きやすくなっている。 と話しています。 記事前半で取りあげた報告書で、研究者らは、温暖化が進む中で今後も熱中症による死亡数は近年のような増加傾向が続くと考えられると指摘したうえで、暑さに対するリスクが高い地域の自治体に、水分補給センターや公共のクーリングセンター、空調設備のある施設の拡充への投資を検討するよう呼びかけています。 また、世界保健機関(WHO)は、気象関連死で最も多いのが暑さだと指摘します。そして、化石燃料の燃焼を主因とする気候変動によって、世界中で猛暑にさらされる人の数が指数関数的に増加していると警鐘を鳴らしています。 よく「災害級の暑さ」という言葉を見聞きしますが、年間に1,000人を超える死者を出す暑さは、もうハッキリ「災害」と呼んでいいと思います。 都市部では、温暖化に加えてヒートアイランド現象による気温上昇も上乗せされます。温暖化を止めない限り、猛暑を乗り切るためにエアコンをつけるようにいくら呼びかけても、熱中症にかかる人は減りません。 人間による都市化を見直して、気温上昇が著しい地域や、弱い立場の人たちが多く住む地域を優先的に、気温を下げるために樹木や公園、水辺を増やし、建物の屋根や屋上、舗道などを明るい色にして太陽エネルギーをより反射できるようにするなど、熱中症を防ぐためにできることはたくさんあります。 長期的に見て、熱中症による死者や救急搬送される人を防ぐために最も重要なのは、1日でも早く化石燃料から脱却することなんですよね。温室効果ガス排出を止めないと、温暖化は止まりませんから。 Source: Copernicus, Howard et al. 2024 / JAMA, 気象庁, 厚生労働省 (1, 2) , 総務省, 時事通信, The Guardian
Kenji P. Miyajima