フェルスタッペンがもしル・マンに参戦したら……? 耐久王クリステンセンは才能を確信「間違いなく速く安定感があるはず」
F1で4度の世界チャンピオンに輝いたマックス・フェルスタッペンはF1キャリアの後、耐久レースに挑戦したいという意志を隠してはいない。 【ギャラリー】“プロフェッサー”プロストに肩を並べたフェルスタッペン。偉大なる「4度のF1チャンピオン」は史上6人目 これについてル・マン24時間レースで最多勝記録を持つトム・クリステンセンは、フェルスタッペンが耐久レースでも必ずや輝かしい結果を残すことができると考えている。 フェルスタッペンは2024年初頭、耐久レースへの情熱について次のように語っていた。 「僕はいつかル・マン24時間レースに出たい。僕が11歳か12歳の時、父がルマンでドライブしていたのを覚えている。最初はLMP2で1年後はLMP1だったけど、その時はまだ僕は子どもだった」 「でもル・マン全体の雰囲気は素晴らしいし、僕はこのカテゴリーをかなり追いかけている。いくつか話もあったけど、機能する形でないといけない。急ぎたくないんだ」 ラスベガスGPの前にフェルスタッペンは、ホンダのイベントでIMSAスポーツカー選手権GTPクラスに投入されているアキュラのLMDh車両ARX-06をドライブ。ホンダはル・マン24時間レースを含む世界耐久選手権(WEC)にARX-06を投入していないものの、レギュレーション上ハイパーカークラスを戦うことが可能な1台だ。 それについて訊かれたフェルスタッペンは再度、将来的な耐久レース挑戦の意志を示していた。 ル・マンをよく知るトム・クリステンセンは、フェルスタッペンが耐久レースに興味を持っていることを喜んでいる。 「彼のことは大歓迎だ。彼がそうした関心を持っているということは、彼がモータースポーツ全般にどれほどの情熱を持っているかを示している。そして彼が多才であること、様々なマシンに乗りたがっていること、他のことに挑戦したいと考えていることを私は支持している」 ただ本人が語る様に、クリステンセンもフェルスタッペンが今はF1に集中していることを強調した。 「マックスが(耐久レースの)グリッドに来てくれたら素晴らしいニュースだ。しかし、それは将来的な話だ。今のところ、彼はレッドブルで全力を注いでいるし、F1レースやチャンピオンシップに勝つことに全力だ。でも、いつの日か彼が他のことをやっている姿を見ることができたら素晴らしいね」 フェルスタッペンは度々、自身の目標はF1で最も成功を収めたドライバーになることではないと公言してきたが、クリステンセン曰く、既に多くの記録を持つドライバーとしては共感できる心境だという。 「彼がそれを達成したくないという意味ではないと思う。ただ、まだどんな目標があるのかと聞かれると答えたくないだけだ。それは理解できる」とクリステンセンは言う。 「彼は今、絶好のポジションにいて、今を生きたいと考えている。それが彼の賢いところだ。その時点の状況について、ひとつの見方しかできないモノだからね。来年やその少し先を見ることはできるけど、現在にコミットし、今それを実行に移すことでのみ歴史に名を刻める。そこは彼のメンタリティの非常に良いところだ」 またフェルスタッペンのF1外での未来について、クリステンセンは次のように続けた。 「F1の中だけでなく、F1以外でも彼には沢山のチャンスがある。WECに関しては規模が大きくなっているし、メーカーも非常に分かりやすい」 「遠くからでも(マシンは)分かるはずだ。アルピーヌにフェラーリ、ポルシェ、BMW、そしてキャデラック……彼らは非常に賢くやっている。そして最初の質問は『マックスはいつル・マンに来るのか?』そしてふたつ目の質問は『どのブランドなのか?』ということだ」 「彼がすでにル・マンに興味を示しているというのは、彼の賢さを示している。F1以外にも激しい競争があることを理解している」 クリステンセンは、仮にフェルスタッペンが耐久レースへの挑戦に乗り出しても、きっと高いパフォーマンスを発揮するはずだと語った。 「彼は速いだろうし、あの手のマシンのドライビングを楽しむはずだ。課題は、彼が他ふたりのドライバーと一緒にやるという事実にある。しかし他のドライバーと協力してマシンを最適化するのは非常に楽しいことだ」 「それは彼がチームとシムレースをやっている際、既に自然にやっていることだ。ル・マンのプロトタイプカーのレースと大差はない。彼はチームメイトを協力しベストを尽くし、レースを通して、マックスがステアリングを握っていない時でもパフォーマンスを発揮できる状況を作り出す必要がある。間違いなく、彼が速くて、ル・マンでも安定した走りを見せるはずだろうけどね」 また、クリステンセンはこう続けた。 「F1出身ドライバーの多くは(サスペンションが)硬いマシンを好むが、耐久レースでは少し柔らかめのマシンが必要だということをすぐに理解するはずだ。ドライバーが快適に感じるためではなく、タイヤを3~5周と長持ちさせるために、もう少しロールさせる必要がある。非常に硬いサスペンションではそれができない。短時間のレースでは非常に効果的だけどね」 そしてクリステンセンは、フェルスタッペンと共にポルトガルでGT3車両のテストを行なった時のことを振り返り、どんなカテゴリーやチームでも歓迎される存在だと語った。 「昨年のことだが、彼は3度目のタイトルを獲得した後にアブダビからポルティマオに直行し、GT3車両でテストを行なった。彼のことは好きだ。地に足がついていて、サーキットではタフなドライバーだ」とクリステンセンは言う。 「彼はこの4年間のF1で、最高のドライバーであることを証明してきたし、彼を倒すには相当な努力が必要だ。それは最速マシンを持っていなかった今年、困難な週末でも状況を好転させてポールポジションを争っていたことからも明らかだ」 「彼はどのチームにとっても素晴らしい才能であり、世界最高のドライバーはどのチーム、どのカテゴリーでも常に歓迎される」
Erwin Jaeggi