国連が日本を「夫婦別姓はまだ進まないのか」と批判するのも当然か…元メーカー勤務の38歳男性が、妻の姓に変えて直面した「厳しい現実」
妻の姓に変えた元メーカー勤務の38歳男性
選挙では、有権者は「自民、公明両党にダメ出しをしつつ、野党も政権を担うには至っていない」とする絶妙なメッセージを送った。今後の議論を見据えて、選択的夫婦別姓への消極・反対派が掲げる反対の理由を、ここで整理してみよう。 「家族の一体感が損なわれる」、「旧姓使用の拡大で乗り切れるのではないか」、「伝統的家族観や家族の絆が破壊される」、「事実婚だと、何か問題が起きるのか」、「戸籍制度の廃止につながる」。概ね、これらに集約されるだろう。 では、夫婦で姓をめぐって様々な葛藤を経験してきた「当事者」は、この間の動向をどう受け止めているのか? 法律婚夫婦のうち、95%が夫の姓で、妻の姓を選ぶ男性は5%に過ぎないのが現実だ。ここでは、その5%の男性に取材し、話を聞いた。 「政治の場で議論されるようになって、当事者として率直に嬉しい。実は、自分自身が保守的な考えから、結婚前は選択的夫婦別姓制度に反対だった。妻との議論を通じて賛成になった立場から、機会があれば、反対する人たちにも丁寧に説明したい」 太平洋上に浮かぶ島国、マーシャル諸島(人口4万人)で暮らす石澤和也さん(38)は、日本人である妻の赴任に伴い、勤務先のメーカーを休職、現地に同行した「駐夫」だ。結婚時に事実婚は頭の片隅にもなく、法律婚を行い、妻が自らの名字「石澤」に改姓するのが当然と判断。区役所に届け出を出す際「本当に出すの?」と嫌がる妻をなだめ、夫婦とも石澤姓になった。 石澤さんが「妻は、何とか石澤姓を使うことに慣れようと努力してくれたが、苦しんでいる様子だった」と振り返るように、結婚した2017年以来、名字を巡る夫婦喧嘩が日常茶飯事となった。そして、妻の「旧姓を使いたい」という話を聞いているうちに、少しずつ石澤さんの心情は変化し始めてきた。 とはいえ、結婚時に夫の姓となるのが「普通」な日本社会において、妻の姓を選ぶことは、「普通ではなくなる」ことを意味する。自らマジョリティーからマイノリティーになる道を選ぶことに対する葛藤や逡巡を繰り返した。 そうした頃、石澤さんにとって決定打となる出来事が起きた。