国連が日本を「夫婦別姓はまだ進まないのか」と批判するのも当然か…元メーカー勤務の38歳男性が、妻の姓に変えて直面した「厳しい現実」
選択的夫婦別姓制度をめぐり、様々な動きが
選択的夫婦別姓制度を巡っては、今年6月以降、多角的な動きが相次いでいる。経団連が「ビジネス現場で、弊害が出ている」と早期実現を提言したのを皮切りに、総裁選、衆院選での争点化により、議論がガラス張りとなり、問題の存在や中身を国民に知らしめることとなった。そして、国連の勧告。就任後の国会答弁で発言は後退したものの、石破茂首相は総裁選最中、選択的夫婦別姓に賛同する姿勢を一貫して示していた。機は熟しつつある。 井田代表理事は「総裁選には、小泉進次郎、上川陽子両氏ら、選択的夫婦別姓の必要性を訴える候補者が出馬した。衆院選では、メディアによる出口調査で賛否を問う設問の一つに加えられた。そして、旧安倍派を含め消極的立場の人がかなり落選した」と述べ、衆院選は制度導入に向けてポジティブな効果をもったと受け止める。 小泉氏は2019年の結婚直後「もし選択的夫婦別姓の環境が整っていたら、私はその(夫婦別姓を選ぶ)可能性があったと思う」と強調。今回の総裁選でも、保守層の党員から反発を受け、劣勢に追い込まれているのを承知の上で、最終盤まで制度導入の必要性を訴え続けた。上川氏は総裁選の討論会で、「個人的には賛成」とした上で、「結婚して、改姓したとき、私自身のアイデンティティーが半分そがれたような思いがした」と偽らざる思いを吐露していた。 選択的夫婦別姓制度とは、結婚時に夫婦同一の姓にするよう求める現行民法を改正し、別姓を望む人に新たな選択肢を提供するというのが趣旨だ。現状通り、夫婦が同じ姓を名乗っても良いし、それが嫌であれば、別々の姓を名乗ることができる。要は、一択(夫婦どちらかの姓に統一する)しかないものに、新たに一択(夫婦とも姓を変えず、別姓を名乗る)を加えるという内容だ。 立憲民主党の野田佳彦代表は衆院選開票直後の記者会見で、2022年に野党各党と共同で民法改正案を国会に提出した実績を挙げ、導入実現に向けた採決を迫る姿勢を鮮明にした。同党は、衆院法務委員会の委員長ポストを確保。野田氏は、選択的夫婦別姓を実現させるのが狙いだとして「ぜひ採決まで持ち込みたい。楽しみにしてほしい」と強調し、年明けの通常国会冒頭に法案提出を目指す意向を鮮明にしている。 背景には、総裁選で賛成、反対それぞれの候補が論戦を交わしたことで、導入に後ろ向きな側面が炙り出された自民党を揺さぶる思惑が十分に込められている。連立パートナーの公明党は大半の議員が賛意を示しており、野党各党は基本的に賛成の立場だ。自民党が委員長ポストを譲り渡したことに加え、衆院選で落選した前任者に変わる新たな法相に選択的夫婦別姓の導入に向け長年取り組んできた鈴木馨祐氏を充てたのを踏まえると、首相が「Goサイン」を出しているフシがある。