「どんな人でも変われる。みんなの俺ん家にしたい」 歌舞伎町の元ヤクザが「自立準備ホーム」を本格稼働
●2度目の刑務所で「聖書」を読み始めた
今は更生支援者となった遊佐さんだが、かつて地元の栃木市にいた頃は「ワル」だった。中学時代からタバコやシンナーに手を出し、高校に行かずに入った暴走族でケンカに加わり、18歳のときに少年院送りとなる。 半年で出てきたあと、20歳から1年間は新宿・歌舞伎町で「ぼったくりバー」の店員などをして過ごした。しかし、戻ってきた地元で、覚せい剤をどっぷりと覚えてしまう。 「クスリから抜け出すためには、環境を変えるしかない」。再び歌舞伎町に出ると、ヤクザになった。 しかし、覚せい剤の引力は強く、その使用で1度目の刑務所行きとなる。そこでもやり直せず、出所の2年後、売人として扱っていた覚せい剤所持の罪で2度目の刑務所送りとなった。 この2度目のとき、ヤクザから足を洗い牧師になった男性の本と出会う。「初めて心から『やり直したい』と思えるようになりました」。聖書を読み始め、出所したあとの2013年7月に洗礼を受け、支える側となった。
●夜勤でコツコツ貯金して手に入れた
自立準備ホームの構想は、数年来、温めてきた。グループホームの仕事で夜勤に多く入るなどし、コツコツと貯金。400万円まで達し、賃貸住宅の更新が控えていたこともあり、今年1月に栃木市に拠点を移した。 結果的には理想的な民家を手に入れたが、「2月から始めた物件探しが一番大変だった」。当初、初期費用を抑えるために賃貸物件を探した。ところが「近所に迷惑がかかる」との理由で、次々と5件も断られた。購入物件も同じで、こちらは3、4件から同じ理由でNGが出た。 遊佐さんは今月上旬、ご近所と町内会長の家、合わせて10軒ほどにホーム開設のあいさつに回った。物件探しの経緯から、「反対されるかも」との不安があったが、そうした声は出なかった。「やっぱり、ほっとしましたね」と正直な感想をもらした。
●少年1人を正式に受け入れる
これに先立つ11月には「再犯しないように地元を離れたい」との意向を持つ少年が1人、お試しでやってきた。期間自体は1週間だったが、講演に出る遊佐さんと東京に出たり、遊佐さんの実家に泊ったりしたこともあり、ホームの滞在は3日だった。一緒に料理をしてご飯を食べるなどして過ごした。 ホーム開設の許可が出たことから、少年は近いうちに遊佐さんの元に正式にやってくる予定だ。そして遊佐さんが紹介した解体工の仕事を始め、自立に向けた道を歩み始める。 こうしたホームは、保護観察所から委託を受けて活動している。その委託費は住居、食費、光熱費、自立準備支援費を合わせて1人1日あたり約5300円。昨今の物価高を考えると、「工夫しながらやっていかないと赤字になる」。 こうしたことから、遊佐さんが代表をつとめる「希望への道」は、月額会員制のサポーターを募集している。月500円から「俺ん家の仲間」になれて、イベントに招待されたり、仲間限定の活動報告メールが届いたりする。