「うつ病」の人に表れる特徴はご存じですか? 原因・症状・治療法も医師が解説!
うつ病の症状とは?
編集部: うつ病では、どのような症状が出ますか? 種市先生: うつ病では、いくつかの症状が出ます。「気分が落ち込む」「悲しい気持ちが続く」「普段楽しんでいたことに興味や喜びを感じられなくなる」などの精神的な症状や、「疲れやすくなる」「睡眠が浅くなったり、逆にたくさん眠っても疲れがとれなくなったりする」などの身体的な症状が現れます。ほかにも食欲が減ったり、増えたりして体重が変わる、考えることや行動が遅くなり、集中力や決断力が落ちることもあります。 編集部: うつ病患者にみられる特徴についても教えてください。 種市先生: うつ病の患者さんは、表情や行動に変化が起こります。表情でいうと「無表情が多い」「ボーっとしている」「表情が暗い」「顔色が悪い」などの特徴があります。また、特徴的な行動では「口数が減る」「遅刻や欠勤が増える」「効率が悪くミスが目立つ」などが挙げられます。周りの人が「いつもと違う」と感じたら、もしかしたら本人はうつ状態で苦しんでいるのかもしれません。 編集部: うつ病を放置しているとどうなるのですか? 種市先生: うつ病を放置すると、ほかの病気と同じように、症状が悪化していきます。イライラや不安などが募り、仕事や人間関係に支障が出ることが考えられます。放置していた結果、最悪の場合自殺に至ることも考えられますので、「うつ病かも」と思ったら早めに受診することが大切です。
うつ病の治療法とは?
編集部: うつ病の治療には、どのような方法がありますか? 種市先生: 薬物療法や心理療法、運動療法などが挙げられます。時には、電気けいれん療法(ECT)、経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation,TMS)などを用いる場合もあります。大切なのは、うつ症状を改善する方法を見つけ、ストレスに耐えられる力を高めていくことです。 編集部: うつ病に対する薬物療法について詳しく教えてください。 種市先生: 一般的な薬として、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)が挙げられます。この薬は、セロトニンの減少を防ぎ、脳内のセロトニン濃度を増やすことでうつ病の症状を緩和します。また、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)も使われますね。これは、セロトニンとノルアドレナリンの両方の減少を防ぎ、神経伝達物質の脳内濃度を上げてうつ病を治療します。また、三環系抗うつ薬(TCA)もありますが、副作用が多いため、SSRIやSNRIよりも後の選択肢とされることが多いですね。 編集部: 薬を服用する以外にはどのように治療するのですか? 種市先生: 心理療法では思考や行動のパターンを見直し、うつ状態を改善する「認知行動療法」や、患者さんの人間関係がうつ病に与える影響を探り、ストレスになっている対人関係を改善していく「対人関係療法」があります。また、「マインドフルネス瞑想」は、東洋の禅に基づく心理療法で、リラクゼーション法の1つです。これらは軽症のうつ状態の方には有効と言われています。 編集部: 重度のうつ病の場合、どのような治療選択肢があるのですか? 種市先生: 重度のうつ病患者さんで、薬物療法や心理療法の効果が無い場合には、「電気けいれん療法(ECT)」や、「経頭蓋磁気刺激(TMS)」がおこなわれることもあります。「経頭蓋磁気刺激(TMS)」は、特定の脳部位を磁気刺激して神経細胞を活性化する治療法です。 編集部: その他、治療における注意点がありましたら教えてください。 種市先生: うつ病の治療には、運動をはじめ、生活習慣の改善も重要です。バランスの取れた食事や十分な睡眠など、ストレス耐性を高める生活習慣がうつ病のリスクを減らし、治療の効果を高めることが示されています。治療と並行して、生活習慣の改善に取り組みましょう。