年末年始にぜひ観てほしい名作映画『グラディエーター』のリドリー・スコットは『エイリアン』も『ブレードランナー』も作ってる
◆命の重み、戦いの「痛み」が染みる作品 主人公マキシマスは兵士たちにも尊敬され、当時の皇帝に「時期皇帝になってくれ」と求められます。それに嫉妬した皇帝の息子コモドゥスはなんと父親を殺害、マキシマスに冤罪を着せて追放。更には彼の家族を焼き殺します。 「焼き殺す」ってねえ、現代人の感覚としては信じがたく、子どもと妻の黒焦げ死体を見た時のマキシマスの表情は胸に突き刺さります。 彼は一度は囚われて処刑されかけますが逃げ、今度は奴隷商人に囚われます。そんな失意の中から最強の「奴隷剣闘士」、即ちGladiatorとなっていくんです。ある思いを胸に。 この映画の優れたところは、キャラがみんな立っている事。ラッセル・クロウもさることながら、コモドゥス役のホアキン・フェニックスの嫌っぶり、残酷さ、低俗さは鳥肌もの! 「次に撮影するならナポレオン。主役はホアキン・フェニックス」と、この時既にスコット監督は思っていたのでは? コモドゥスは美貌の皇帝な分、余計に内面の醜さが浮き上がり、主演のラッセル・クロウを食う勢いで、「皇帝コモドゥス」が焼き付きました。 繰り返される格闘技で闘う戦士たちもそれぞれ「人生」を背負っていて、ただ殺される人なんて一人もいません。殺し合いの前の生活や訓練の中で友情さえ芽生えたりします。それでも殺しあうしかない。そういう命の重み、戦いの「痛み」が染みる作品です。
◆最後の結末を見てあなたはきっと涙する さて、最低の皇帝コモドゥスにはルッシラという美しい姉がいて、かつてマキシマスと恋愛関係にあったらしい様子も描かれます。 実の弟には近親相姦を迫られ、忌避しながらも、息子を殺されることを恐れて、コモドゥスを少しずつ受け入れていく母親の心の機微は、女性として見ていてとてもスリリング。 彼女の思いは常にマキシマスに在り、クーデターの時はマキシマス脱走の手助け…。アクションだけでなく、愛欲シーンもたっぷりで、女性がみても面白いことは太鼓判! 運命はやがて、因縁のコモドゥスとマキシマスを引き合わせ、二人は闘うことに。けれどその戦いの直前、コモドゥスはまたも、信じがたい卑劣な行動に出るのです。 人間の弱さ、醜さ、社会の恐ろしさと、それに負けない意志の力と信頼の素晴らしさ。最後の結末を見てあなたはきっと涙すると思います。そして、辛いけれども成し遂げられたことには拍手せずにはいられないはず。 歴史を大いに活用し、魅力をもったそれぞれの登場人物のパッションを見事に描き出した傑作です!!お正月の「一本」はまずこれに決まり! P.S 余力があれば是非23年後のホアキン・フェニックスを見に、劇場にどうぞ!(まだ上映館か、オンラインで見れると思います)
さかもと未明
【関連記事】
- 写真ポーズの違いに見る日仏恋愛文化の違いとは?ジャンヌ・モローの若い頃かと思わせる、強気な女に写されたイングリッド・バーグマン
- 仏のスタジオが撮った貴重な写真。ジャン・コクトー、サルバドール・ダリ、藤田嗣治…アラン・ドロンと娘 、カトリーヌ・ドヌーヴと息子の家族写真も!
- ドヌーヴやディートリッヒも訪れたパリのスタジオ・アルクールを創設した謎多き女性。愛の証として贈られた物とは
- 誰もが女優気分を味わえる!? パリの有名スタジオ「アルクール」でポートレイト撮影体験。そこには自分の知らない私がいた
- さかもと未明、膠原病、親友・川島なお美の死を乗り越え、パリの絵画展で入選。「手に筆をくくりつけてでも描こうと思った」