汚染した廃水池を「新たな電力源」に変える方法をイノベーションの専門家が考案
ニュージーランド国内には使用されていない廃水池が多くあり、ここから発生するバイオガスが環境に悪影響を与えている。 この問題を解決するためにいま注目されているのが「廃水池での発電」だ。同国のリンカーン大学でイノベーションを教えるフェイス・ジェレマイア講師が提案する「逆転の発想」とは?
3つの課題、1つの解決策
ニュージーランドは3つの関連性のある課題に直面している。不安定な電力供給、温室効果ガスの排出削減、そして汚染した廃水池の管理である。 廃水池を再生可能エネルギー源に変えるために、浮体式ソーラーパネルを設置するという策はある。しかし、これだけでは初期費用や製造・廃棄時の環境負荷などが問題になるだろう。 より即効性があり、費用対効果の高い解決策はほかにもある。太陽光発電の半分のコストで継続的に発電すると同時に、メタンガス排出や藻類の繁殖といった問題にも対処する方法だ。 具体的には、バイオガス発電と熱発電システムを、浮体式ソーラーパネルに組み合わせる──この方法によって、3つの問題を一挙に解決できるはずだ。
バイオガス発電の欠点をどう補うか
廃水池からのメタンガス排出は、ニュージーランドの大きな環境問題だ。だが、バイオガス発電機を設置すれば、このメタンガスが大気中に放出される前に回収し、代わりに発電に利用できる。 ただ、バイオガス発電には重大な欠点がある。メタンガスを回収するために廃水池に蓋をすると、池の温度が上昇し、藻類が過剰に繁殖してしまう可能性があるのだ。 そこで、池の熱を電力に変換する「熱発電システム」の出番となる。廃水池の発電効率を向上させるだけでなく、廃水池の温度を下げ、藻類の繁殖や水の蒸発を抑えるのに役立つ。 最後に、バイオガス発電のための蓋の上にソーラーパネルを取り付ける。前述の通り、初期設置費用は高いものの、廃水池の表面に設置すればほかの貴重な土地を占有することなく、再生可能エネルギーを生み出せる。 また、ソーラーパネルが太陽光を遮ることで、藻の繁殖を抑えられるメリットもある。 こうした取り組みは、海外でも成功している。 メルボルンでは、廃水池でのメタンガス発電によって何千もの世帯に電力を供給している。米国の一部でも、廃水池に浮体式ソーラーパネルを設置する事例が増えている。 これらの技術をうまく組み合わせれば、ニュージーランドは問題だらけの廃水池を再生可能エネルギーのハブへと変えられるはずだ。
Faith Jeremiah