《自宅か施設か》認知症の家族を自宅介護するときの心得「お風呂での“失敗”が始まったら施設入居の心構えを」
認知症にならない、とは誰しも言い切れないもの。家族が認知症になる可能性もあれば、すでに認知症の家族と暮らしているという人もいるだろう。そんな家族との暮らしを前向きにできるようにと考える、理学療法士の川畑智さんが『ボケ、のち晴れ 認知症の人とうまいこと生きるコツ』(アスコム)を上梓した。これから起こることを知り、心の準備をすることが大切だという川畑さんに、介護する側の心得について教えてもらった。 【写真】認知症の家族との暮らしを前向きにできるようにと考える、理学療法士の川畑智さん
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認知症の家族と関わるうえで大切なこと3つ
川畑さんは、理学療法士としての病院勤務を経て起業し、認知症患者のサポートや認知症予防の分野に取り組んでいる。全国で、年間200~250回ほどの講演も行い、多くの認知症患者や介護をする人と関わってきた経験から、「認知症の症状は、お天気と同じで、晴れたり曇ったり」だと語る。 「思うようにいかず、本人も介護する人も、お互いにずっしりと重たい『曇り』になってしまう日もあります。でも、ふとした瞬間に理解が進み、心が通じ合う『晴れ』の瞬間もあります」(川畑さん・以下同) そんな「晴れ」の日を増やすために知っておきたいと川畑さんが話すのが、下記の3つ。 ・これからなにが起きるのか? ・なぜそれが起きるのか? ・そんなとき、どうすればいいのか? これらを心得えておくと、いざ、そのときに心の余裕をもって対応することができるという。 「私が誰より笑ってほしいのは、認知症の家族を支えるあなたです」
認知症の人に起こること
まず、1つめの「これからなにが起きるのか?」について知っておこう。アルツハイマー型認知症の症状は、「FAST」と呼ばれる指標をもとに段階1の健康な状態からはじまって7段階ある。 ◆段階2 【物の置き忘れ、人の名前が出てこない】 年相応の老化現象としても、同じような症状が出る。 ◆段階3 【場所が苦手になる、家事が苦手になる】 新しい場所に出かけるとわからなくなったり、料理や洗い物などが苦手になったりする ◆段階4(軽度) 【計算の苦手、物盗られ妄想】 日常生活はまだ送れているけれど、明らかな脳の衰えがあらわれ始める ◆段階5(中等度) 【入浴拒否、無気力・無関心】 お風呂を拒否し始め、衛生面でも問題が。気力も衰え、無関心になってくる。 ◆段階6(やや重度) 【服が着られない、トイレの失敗】 認知症の後期に近づくと、トイレの失敗や着衣の問題が起きてくる。 ◆段階7(重度) 【言葉の不明瞭、笑う能力の喪失】 発する言葉が聞き取れなくなり、最後に笑顔が失われていく。 ◆段階3までは認知症の前段階 段階3まではMCI(軽度認知障害)と呼ばれる、認知症に移行する前の段階。日常生活に支障はないものの「あれ?ちょっとおかしいぞ」ということが増えてくる。段階7の「重度」まで、人は笑うことができる。