ベラルーシに「スパイの親玉」と名指しされた社長が激白 「拘束された中西さんは本当に普通の人」
「本当に普通の人」
再び社長に聞くと、 「単なる趣味の範囲内で写真撮影していたのだと思いますよ。私が知る中西さんは、とてもスパイ活動をするような人間ではありません。本当に普通の人ですよ。私だって普通の会社の経営者ですから、いろいろな市場に興味はあります。JICA(国際協力機構)とも付き合いがあって、さまざまな国のビジネスに関する情報を知りたかったとはいえ、旧共産圏では商売にならなかったので、中西さんと突っ込んだ話はしませんでした」 また中西さんがスパイであることの「動かぬ証拠」として、特番後半では〈上官〉とされた社長とLINEでメッセージを交換する場面がある。 だが、日本語では単に企業の海外進出について二人が会話しているだけなのに、ロシア語に翻訳された字幕を読むと、 〈この前の攻撃はアメリカによる偽装のようです。もし、ここで何か起こったら、すぐご連絡します〉 などと、まったく異なる内容をでっち上げて放送されているのだ。
日本人を悪玉に仕立てた?
元時事通信モスクワ支局長で、拓殖大海外事情研究所客員教授の名越健郎氏が言う。 「先月、欧米とロシアは双方が拘束するスパイを相互交換したのですが、その際も親ロ政権のベラルーシで拘束されたドイツ人スパイが含まれていた。プーチン政権からすれば、釈放してほしいロシア人スパイは大勢残っていますから、交換要員のスパイとして、西側勢力の一員である日本人を悪玉に仕立てたのかもしれません。経済が衰退し、世界の中でも日本人の存在感が落ちていますから、今後も不測の事態に巻き込まれる可能性があります」 事前に特番の放送中止を求めたが、相手にされなかった日本政府。とても真相解明などできる状態ではなさそうだ。
「週刊新潮」2024年9月19日号 掲載
新潮社