結局、人生の悩みの原因は人間関係――「生きづらさ」を抱えた鶴見済が到達した「こまめにあきらめていく」境地
悩んだ先にある楽観を利用して生きる
家庭でも会社でも学校でもない、気楽なつながりを作ることができるサードプレイスを、鶴見は2018年から主宰するようになる。「不適応者の居場所」という集まりだ。代々木公園などでの開催を鶴見がTwitterなどで告知すると、20代から40代を中心に、30人前後の人々が集まる。対象として挙げられているのは、「ひきこもりがち、フリーランス、労働週4以下、心の病、社内ぼっちなど、様々な理由でつながりをなくしがちな人」。鶴見は「のんびりやりましょう」と呼びかける。 「従来からある人間関係ってものすごく固いから、自由に距離が取れなくてぶつかるんですよ。でも、『不適応者の居場所』は流動的な感じがして。毎回新しい人が来て、常連の人は3分の1ぐらいですね。自分もいろいろな人間関係を経験しましたけど、社会のなかで学校、家庭、会社っていう3つは大きくて、狭いところに閉ざされてる。『不適応者の居場所』みたいな、流動的な居場所をいっぱい作ることで、固く閉ざされた人間関係を外側から揺さぶってやることができるんじゃないかと思ってるんですよね」 とはいえ、そんな鶴見自身も、時代の変化に触発されている部分が大きい。 「『家族は素晴らしい』とかの価値観がわからないのは自分だけじゃないだろうと思ってたんですけど、ようやくこんなことを言えるようになったんです。それを言えるようになったのは、アセクシュアルの人が『恋愛感情はないです』って堂々と言ったり、自分の弱いところを言える人が増えたり、セクシャルマイノリティーの人も認められるようになったりしている時代の流れに影響を受けてるのもあります」
『人間関係を半分降りる』には、全編を通して「あきらめる」と「幸せ」という言葉がそれぞれ約30回出てくる。鶴見のなかでは、「あきらめ」こそが「幸せ」への道なのだろうか。 「悩んで悩んで、もう十分っていうぐらい悩んでから、『もうやめた』となると、むちゃくちゃ楽観的になったりするんですよ。笑っちゃったりとか、もう失うものは何もないみたいな。その楽観をつかむことが強さでもあるし、楽観とか強さとかを利用して生きる。それが自分のおすすめの生き方なんですよ。その都度、その都度、こまめにあきらめていくっていう。自分ぐらいの年齢になったら、こっから先は自分のキャリアでもあきらめていく面があるだろうし、いつ死がきても後悔がないようにはしています。人が一生のうちで発揮できるエネルギーのピークはもう過ぎてると感じますよね」